研究課題/領域番号 |
22540397
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
大同 寛明 大阪府立大学, 工学研究科, 教授 (70188465)
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キーワード | 結合振動子系 / リミットサイクル振動子 / 減衰振動子 / エイジング / エイジング転移 / 興奮性振動子 / サドルノード分岐 / 同期現象 |
研究概要 |
本研究は自律的にリズムを生み出すユニット(振動子)が多数集まり、互いに作用を与え合うような系(結合振動子系)において、劣化などにより自律的に振動できなくなったユニット(不活性素子)が系全体の振る舞いに与える影響を明らかにし、これを系の振る舞いのコントロールに応用することを基本的な目的としている。具体的な課題は三つあるが、今年度は主に課題(1)に含まれるエイジング転移の理論的研究に取り組んだ。ここで、「エイジング」とは結合振動子系において不活性素子が増えることを意味し、「エイジング転移」とは、不活性素子の割合が臨界値を越えることによって、系全体が定常状態に落ち込む転移現象をさす。物理や工学的な系において全体の振動が停止すればその系の本来の機能を果たすことはできなくなる。また、生物系や生理学的な系において振動が停止すれば、それは死に直結しかねない。このような意味でエイジング転移の研究は重要である。 本年度の成果は二つある。(a)まず、広い意味での拡散型結合をもつ振動子系の強結合極限を理論的に調べ、この極限でのエイジング転移点を決める条件式を導出した。この結果は、結合の様式(局所結合か大域結合かあるいは複雑ネットワークかなど)に依存しないきわめて一般的なものである。また、系の活動度を特徴づけるオーダーパラメーターの強結合極限でのふるまいを明らかにした。さらに、この研究において、エイジングの概念を、振動子の分岐パラメーター値の系内分布が変化することとして一般化した。(b)これまで研究対象としてこなかった興奮性の振動子の集団におけるエイジングの効果を(a)で触れた一般的な枠組みで調べた。興奮性の振動子のモデルとしてMorris-Lecar振動子や位相振動子を用いた。数値シミュレーションの結果はエイジング転移を起こす前の相が二つの領域に分かれることや特異なスケーリング則の存在を示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的を達成するために掲げた三つの課題のうち、最初の二つについて最低目標は達成している。また、当初予定していなかった理論の一般化にある程度成功した。
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今後の研究の推進方策 |
研究の基本方針に大きな変更はないが、当初予定した以上に、エイジング転移の理論を発展させるために時間を使いたい。また、特に局所結合系のdynamic phaseにおけるダイナミックスを数値的かつ理論的にもっと深く調べたい。局所結合系ではランダムネスが効いてくるので、すでに見つけているもの以外にも、興味深い現象のあることが期待される。従って最後の課題への着手は少し遅れる可能性がある。
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