(1)まず不確定性関係に関しては、素朴なHeisenberg型の不確定性関係が実験的に破れる可能性に関しては、小澤博士の提案を少し変更し普遍的に成立するHeisenberg型の不確定性関係を提案し、その特性を詳細に研究した。 (2)エンタングルメント以外の量子論の特性として注目を集めたQuantum Discordの研究に関連して、Bellの隠れた変数の模型を吟味し、条件付きの測定という概念に適用すると隠れた変数の模型が破たんすることを示した。これは量子論における演算子の合成則が隠れた変数の理論では再現できないことに関係している。 (3)エンタングルメントの判定条件であるCHSH不等式およびBellの不等式に関しては、通常は局所的な隠れた変数の理論では記述できない非局所的な性質として理解されているが、これは正確ではなく、CHSH不等式は隠れた変数の模型とは無関係であることを示した、同時にBellの用いた隠れた変数の模型はGleasonの定理のいうように、次元が4のヒルベルト空間では定義できないことを明確に示した。 (4)場の理論および素粒子論の基礎的な問題に関しては、CPT対称性の破れの可能性とかその機構を考察した。非局所的な場の理論では、ローレンツ対称性および標準理論のSU(2)xU(1)ゲージ対称性を損なわずにCPTの破れが導入でき、ニュートリノと反ニュートリノに異なる質量を与えうることを示した。これは将来の宇宙のバリオン数の考察等に何らかの意味を持つことが期待される。
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