研究課題/領域番号 |
22540402
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
高岡 正憲 同志社大学, 理工学部, 教授 (20236186)
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研究分担者 |
毛利 英明 気象庁気象研究所, 物理気象研究部, 主任研究官 (10354490)
松本 剛 京都大学, 大学院・理学研究科, 助教 (20346076)
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キーワード | 流体 / 乱流 / シミュレーション / 風洞実験 / 確率過程 / 統計熱力学形式 |
研究概要 |
前年度までに気象研究所大型風洞において熱線流速計を用いて取得した速度変動の時系列データを解析し、乱流運動エネルギーの大スケール変動が従う統計則が、通常の統計熱力学における正準分布と同じ形式で記述できることを見いだし、論文等で発表した。また同風洞において、前年度まで用いたX型熱線に比べて空間分解能が高いI型熱線を用いて測定を行い、乱流エネルギー散逸率が従う統計則について解析を進めている。 風洞乱流で観測された対数正規性の普遍性を考えるために、相関を持つ最もシンプルな系としてOrnstein-Uhlenbeck過程(OU過程)を数値計算および解析表現により調べた。解析表現により実験や数値計算では区別できなかった統計性の違いが明らかになった。これらの結果を論文にまとめる作業を進めている。実際の乱流では複数の特性長があるので、OU過程を複数の相関がある場合に拡張し、その統計的性質を調べる予定である。 風洞における熱線流速計やOU過程の数値計算で得られるのは、1次元の時系列データである。 乱流の空間的大スケール揺らぎの統計を調べるために、Navier-Stokes方程式の直接数値シミュレーション(DNS)をした。現有計算機の能力も考え、8192×256×256の格子点数で計算をし、1方向のみではあるが大スケールを調べることができ、風洞実験やOU過程でみられた大スケール揺らぎのスケーリング則を再現できることを示した。次の段階として空間多次元の粗視化を行なった大スケール揺らぎを調べるが、これにはラージエディシミュレーション(LES)を用いる予定である。また、2次元乱流であればDNSにより大スケール揺らぎを調べることも可能である。 これらの横断的研究の結果により大スケール揺らぎの普遍性に対する知見が得られる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
風洞実験に関しては、データの取得と解析は計画通りに進捗しており、成果の一部は既に論文などとして報告されている。数理モデルの方でも、数値計算および解析表現の良好な一致が見られ現在論文を作成中である。 大規模数値シミュレーションの方では、1次元であれば現在利用可能な計算機でDNSにより粗視化した大スケール揺らぎを調べることが可能であることが分かった。
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今後の研究の推進方策 |
風洞実験に関しては、とくに乱流エネルギー散逸率の大スケール変動を調べるため、I型熱線を用いて取得した高空間分解能データの解析を進めることにする。 乱流における大スケール揺らぎの統計則を数理的側面から検討するために、前年度までに調べてきたOU過程を、乱流同様に複数の特性時間を持つように拡張して調べる。 乱流の数値計算にLESを用いることにより、空間多次元の粗視量の統計法則そ調べる。また、DNS可能な空間2次元の乱流についてもその揺らぎを考える予定である。
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