研究課題
高校物理の教科書に明確に書かれているように、液体中を伝播できる音波は縦波のみであり、横波は存在しないという考え方が一般的である。これは液体では「ずれ」応力が固体に比較して著しく小さく、横方向の復元力がない、とされてきたためである。しかしながらこまでの研究から、液体ガリウムにはナノメートル、ピコ秒の空間・時間スケールで、横波音波の存在を示唆するX線非弾性散乱スペクトルが得られている。本研究では、このような横波励起モードが、普遍的に液体金属に存在することを実験的に証明し、液体中に予想される固体的な「かご」状熊のミクロな弾性的性質を明らかにすることを目的とした。本年度はSPring-8のBL35XUビームラインにおいて、液体鉄、銅、およびスズについてX線非弾性散乱測定を行い、いずれの試料のスペクトルにも液体ガリウムと同じように、横波励起によると思われる信号を見いだした。そのミクロな弾性的性質は、特にポアソン比について解析を行い、鉄、銅に予想される正二十面体は、形状保全性の強い硬いクラスター、ガリラムやスズでは、短寿命の共有結合による柔軟性の高いクラスター、と元素による違いが見いだされた。現在、共同研究者によって第一原理分子動力学計算が行われており、暫定的には実験と良い一致が見られる。これらの結果については、X綿非弾性散乱についての国際会議に招待されて講演を行った。また、国内でも日本物理学会、日本放射光学会において口頭発表を行った。また、日本金属学会の機関誌に結果の一部が解説論文として掲載され、物理学の国際雑誌に論文2編を投稿中である。さらに、本研究テーマの拡張として、+イオンと-イオンが逆方向に振動する、光学モードが溶融塩中に存在することも、世界で初めて実験的に検出することに成功した。
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日本金属学会誌「まてりあ」
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