研究概要 |
今年度は研究計画に則りながら、量子エネルギーテレポーテーション(QET)の理論研究を行った。研究発表においても、2011年7月に米国で行われたInternational Conference on Computing, Communications and Control Technologiesという国際会議において、QETの総合報告がApplications of Informatics and Cybernetics in Science, Engineering and other areasというセッションでの"Session's Best Paper Award"を受賞した。門同時にこのレビュー論文が会議全体での"the best 10% of the papers"にも選ばれ、the Journal of Systemics, Cybernetics and Informaticsから出版される会議録にも収録予定である。量子ホール端電流を用いたQETの実験的検証のための基礎的理論研究にも進展があった。ホール端の励起の典型的速度は10の6乗メートル/秒で、非相対論的物理系でのQETが適用できるが、それでも古典通信部分とそれに連なる量子操作に関してはかなり素早く実行する必要があった。そこで実験可能な技術レベルに近い実験装置の具体的配置を考え、ホール端電流の真空状態の量子揺らぎ局所的測定完了後に電流上流部分へその測定情報が遡るようにし、そこでの真空揺らぎから測定結果に依存した操作によって零点エネルギーの一部を取り出せる設定を提案した。特にエネルギーを取り出すための最後の局所的操作部分については別な量子ホール端系を使用することで、素早い操作の実現が可能であることを見出した。同時に、真空揺らぎから取り出された転送エネルギーはこの第2のホール電流によって外部に輸送されるが、それを直接観測することも有望であることが判明した。第2のホール電流に上乗せされる転送エネルギーは、この実験提案だと100マイクロ電子ボルト程度が見込まれ、実測可能なオーダーである。 またNIIのByrnes氏らの実験グループとともにボーズアインシュタイン凝縮系(BEC)でのQET検証実験可能性の理論研究も進行中である。量子不等式を用いた量子もつれ破壊と転送エネルギー量の関係性の研究も順調に進めている。
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