研究課題/領域番号 |
22540407
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
清水 明 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (10242033)
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キーワード | 統計力学 / 非平衡 / 応答関数 / 熱的量子純粋状態 |
研究概要 |
前年に引き続いて、応答関数の普遍的性質を調べるとともに、多体量子系の統計力学的性質の新しい計算法の研究を、並行して行った。 応答関数の普遍的性質については、相転移が起こって相が変わってしまっても、そのまま成り立つかどうかの研究を進めた。相転移が明確における系の応答を計算するためには、様々な工夫が必要であり、その点をひとつひとつ解決しつつある。preliminaryな結果を学会発表できるレベルにまで達した。 多体量子系の統計力学的性質の新しい定式化については、大きく進展し、等重率もボルツマン公式も不要な、まったく新しい量子統計力学の定式化に成功した。この定式化では、平衡状態をたった1個の量子純粋状態で表す。その特別な状態を、我々はThemal Pure Quantm State(TPQ)と名付けた。そして、驚くべき事に、そのたった1個のTPQから、圧力や磁化のような力学量のみならず、温度やエントロピーなどの純熱力学量まで求められてしまうのだ。さらに、この定式化を用いると、平衡状態にある多体量子系の性質が今までよりもずっと簡単に計算できるようになる、という実用性も備えている。なぜならば、ランダムベクトルにハミルトニアンの1次式をかけ算してゆくだけで、TPQが求まってしまうので、空間次元や温度にも制限はないし、frustrationがる系にも問題なく適用できるからである。この成果は多くの興味を集め、論文は、Phys.Rev.Lett.に掲載されることになった(印刷中)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
等重率もボルツマン公式も不要な、まったく新しい量子統計力学の定式化に成功したから。
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今後の研究の推進方策 |
上述の、Thermal Pure Quantum Stateのアイデアを、非平衡状態に拡張する可能性をさぐる。ただし、これは大変な困難を伴うので、一歩一歩研究を進める。
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