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2012 年度 実績報告書

量子物理学と非平衡熱統計力学との相互適用

研究課題

研究課題/領域番号 22540407
研究機関東京大学

研究代表者

清水 明  東京大学, 総合文化研究科, 教授 (10242033)

研究期間 (年度) 2010-04-01 – 2014-03-31
キーワード統計力学 / 熱的量子純粋状態 / 非平衡 / 応答関数
研究概要

量子統計力学の全く新しい定式化を、さらに推し進めた。この定式化では、熱平衡状態を、thermal pure quantum stateと名付けた、たったひとつの純粋状態で表す。従って、統計力学の全ての公式が、従来とは異なるものに置き換わっている。もちろん、最終結果(実験と比較できる予言)は、従来の公式の結果と一致する。
具体的なthermal pure quantum stateとしては、ミクロカノニカル集団に対応するmicrocanonical thermal pure quantum stateだけではなく、カノニカル集団に対応するcanonical thermal pure quantum stateも構築することに成功した。これにより、扱いたい問題に応じて、もっとも便利なthermal pure quantum stateを使うことができるようになった。
また、非平衡定常状態の非線形応答を、分子動力学法で求めることもできるようになった。これにより、解析計算では答えが求まらないような現実的なモデルについて、広い周波数範囲にわたって、非平衡定常状態の非線形応答が求められるようになった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

量子統計力学の全く新しい定式化を、さらに推し進めることができたから。特に、ミクロカノニカル集団に対応するmicrocanonical thermal pure quantum stateだけではなく、カノニカル集団に対応するcanonical thermal pure quantum stateも構築することに成功したのが大きい。なぜなら、これにより、扱いたい問題に応じて、もっとも便利なthermal pure quantum stateを使うことができるようになったからである。
また、非平衡定常状態の非線形応答を、分子動力学法で求めることも、ほぼ予定通り進んだ。これにより、解析計算では答えが求まらないような現実的なモデルについて、広い周波数範囲にわたって、非平衡定常状態の非線形応答が求められるようになったのが大きいと考える。

今後の研究の推進方策

上述のthermal pure quantum statesが大きなブレークスルーなので、その理論を発展することに注力する。たとえば、thermal pure quantum statesを使って、線形非平衡統計力学の再構築を行う。従来は、初期状態にカノニカル分布を仮定していて、導出にもその性質を積極的に使っていた。しかし、初期状態にthermal pure quantum stateを仮定すると、それらの大部分は成り立たなくなる。それでも線形応答理論の結果が導ける事を示す。
また、非平衡定常状態の非線形応答を、分子動力学法で求める手法もさらに進めたい。
さらに、長距離系の熱力学・統計力学の確立を目指す。通常の熱力学・統計力学の一部が破綻することは知られているが、適切な修正により、使えるようになることも期待できる。そこで、具体的に、どこをどのように修正すればよいのか、特に、具体的な予言力に重点を置いて調べる。

  • 研究成果

    (14件)

すべて 2012 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (11件) (うち招待講演 3件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Thermal Pure Quantum States at Finite Temperature2012

    • 著者名/発表者名
      S. Sugiura and A. Shimizu
    • 雑誌名

      Phys. Rev. Lett.

      巻: 108(selected as Editors' suggestion) ページ: 240401-1--240401-4

    • DOI

      10.1103/PhysRevLett.108.240401

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Nonequilibrium Molecular Dynamics Simulation of Interacting Many Electrons Scattered by Lattice Vibrations2012

    • 著者名/発表者名
      F. Lee, T. Yuge, A. Shimizu
    • 雑誌名

      J. Phys. Soc. Jpn.

      巻: 81 ページ: 064710-1--9

    • DOI

      10.1143/JPSJ.81.064710

    • 査読あり
  • [学会発表] Universal Properties of Optical Response Functions

    • 著者名/発表者名
      Akira Shimizu, Tatsuro Yuge
    • 学会等名
      DYCE International Workshop
    • 発表場所
      屈斜路プリンスホテル(北海道、川上郡)
  • [学会発表] Optical Conductivity Sum Rules Extended to Nonequilibrium

    • 著者名/発表者名
      Tatsuro Yuge, Akira Shimizu
    • 学会等名
      EXCON2012
    • 発表場所
      Groningen, Netherland
  • [学会発表] 有限温度の熱的純粋量子状態:統計力学の新しい定式化

    • 著者名/発表者名
      清水明
    • 学会等名
      第17回ナノ量子情報エレクトロニクスセミナー
    • 発表場所
      東京大学ナノ量子情報エレクトロニクス研究機構(東京都、目黒区)
    • 招待講演
  • [学会発表] 統計力学の最近の発展と課題 --- 私的考察

    • 著者名/発表者名
      清水明
    • 学会等名
      統計物理学懇談会
    • 発表場所
      学習院大学(東京都、豊島区)
    • 招待講演
  • [学会発表] 非平衡統計力学と光学過程

    • 著者名/発表者名
      清水明、弓削達郎
    • 学会等名
      日本物理学会2012年秋季大会シンポジウム:超高速分光・散乱と非平衡統計力学・情報統計力学のクロスオー バー
    • 発表場所
      横浜国立大学(神奈川県、横浜市)
    • 招待講演
  • [学会発表] Thermal Pure Quantum Stateを用いたカゴメ格子の熱的性質の解析

    • 著者名/発表者名
      杉浦祥,清水明
    • 学会等名
      日本物理学会2012年秋季大会
    • 発表場所
      横浜国立大学(神奈川県、横浜市)
  • [学会発表] Thermal Pure Quantum Stateによる比熱・帯磁率などの計算公式

    • 著者名/発表者名
      杉浦祥,清水明
    • 学会等名
      日本物理学会2012年秋季大会
    • 発表場所
      横浜国立大学(神奈川県、横浜市)
  • [学会発表] 光場中の多バンド有効ハミルトニアンの導出

    • 著者名/発表者名
      弓削達郎,清水明
    • 学会等名
      日本物理学会第68回年次大会
    • 発表場所
      広島大学(広島県、東広島市)
  • [学会発表] 等重率からみる長距離相互作用系の熱力学構造

    • 著者名/発表者名
      日向理彦,清水明
    • 学会等名
      日本物理学会第68回年次大会
    • 発表場所
      広島大学(広島県、東広島市)
  • [学会発表] 熱的純粋量子状態におけるゆらぎ

    • 著者名/発表者名
      杉浦祥,清水明
    • 学会等名
      日本物理学会第68回年次大会
    • 発表場所
      広島大学(広島県、東広島市)
  • [学会発表] 熱的純粋量子状態におけるエンタングルメント

    • 著者名/発表者名
      杉浦祥,清水明
    • 学会等名
      日本物理学会第68回年次大会
    • 発表場所
      広島大学(広島県、東広島市)
  • [備考] http://as2.c.u-tokyo.ac.jp/

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公開日: 2014-07-24  

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