研究課題/領域番号 |
22540407
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
清水 明 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (10242033)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 統計力学 / 熱的量子純粋状態 / 非平衡 / 応答関数 |
研究概要 |
量子統計力学の全く新しい定式化を、さらに推し進めた。この定式化では、熱平衡状態を、thermal pure quantum stateと名付けた、たったひとつの純粋状態で表す。従って、統計力学の全ての公式が、従来とは異なるものに置き換わっている。もちろん、最終結果(実験と比較できる予言)は、従来の公式の結果と一致する。 具体的なthermal pure quantum stateとしては、ミクロカノニカル集団に対応するmicrocanonical thermal pure quantum stateだけではなく、カノニカル集団に対応するcanonical thermal pure quantum stateも構築することに成功した。これにより、扱いたい問題に応じて、もっとも便利なthermal pure quantum stateを使うことができるようになった。 また、非平衡定常状態の非線形応答を、分子動力学法で求めることもできるようになった。これにより、解析計算では答えが求まらないような現実的なモデルについて、広い周波数範囲にわたって、非平衡定常状態の非線形応答が求められるようになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
量子統計力学の全く新しい定式化を、さらに推し進めることができたから。特に、ミクロカノニカル集団に対応するmicrocanonical thermal pure quantum stateだけではなく、カノニカル集団に対応するcanonical thermal pure quantum stateも構築することに成功したのが大きい。なぜなら、これにより、扱いたい問題に応じて、もっとも便利なthermal pure quantum stateを使うことができるようになったからである。 また、非平衡定常状態の非線形応答を、分子動力学法で求めることも、ほぼ予定通り進んだ。これにより、解析計算では答えが求まらないような現実的なモデルについて、広い周波数範囲にわたって、非平衡定常状態の非線形応答が求められるようになったのが大きいと考える。
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今後の研究の推進方策 |
上述のthermal pure quantum statesが大きなブレークスルーなので、その理論を発展することに注力する。たとえば、thermal pure quantum statesを使って、線形非平衡統計力学の再構築を行う。従来は、初期状態にカノニカル分布を仮定していて、導出にもその性質を積極的に使っていた。しかし、初期状態にthermal pure quantum stateを仮定すると、それらの大部分は成り立たなくなる。それでも線形応答理論の結果が導ける事を示す。 また、非平衡定常状態の非線形応答を、分子動力学法で求める手法もさらに進めたい。 さらに、長距離系の熱力学・統計力学の確立を目指す。通常の熱力学・統計力学の一部が破綻することは知られているが、適切な修正により、使えるようになることも期待できる。そこで、具体的に、どこをどのように修正すればよいのか、特に、具体的な予言力に重点を置いて調べる。
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