研究課題/領域番号 |
22540412
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
大橋 洋士 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (60272134)
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キーワード | フェルミ原子ガス / 超流動 / BCS-BECクロスオーバー / トラップポテンシャル / 擬ギャップ / 強結合効果 / ゆらぎ / 非一様性 |
研究概要 |
トラップされたフェルミ原子気体のBCS-BECクロスオーバー領域における擬ギャップ現象の研究を研究実施計画にしたがって実施、強結合T行列理論の枠組みで、(1)超流動転移温度以上での擬ギャップの温度依存性の解明、および、(2)超流動転移温度以下への拡張、を行った。 (1)については、光電子分光型実験で観測された1粒子励起スペクトルの温度変化を理論的に再現することに成功、擬ギャップ効果が高温領域でどのように消失していくかを明らかにした。 (2)については、超流動転移温度以下での超流動状態密度、1粒子励起スペクトル強度をクロスオーバー領域で計算した。それにより、中間温度領域で、ガス中心部では超流動秩序が支配的である一方、その周辺では超流動揺らぎに伴う擬ギャップが依然優勢という、シェル構造が実現することを明らかにした。この結果に基づき、粒子間相互作用、温度、ガス中心部からの距離、を3つのパラメータとする相図を作成した。 上記の研究に加え、トラップポテンシャルだけでなく、空間の非一様性をより積極的に利用する研究も実施した。スピンインバランスが存在する場合、ポテンシャルの局所的な空間変化により超流動状態中に超流動秩序が壊れた空間領域が出現、その近傍に局在励起状態が現れることを理論的に指摘した。また、この局所ポテンシャルをリングトラップ中のフェルミ原子ガス超流動に導入すると、自発的に超流動流が生成されることも理論的に明らかにした。更に、局所ポテンシャルに集団励起が衝突した際のトンネル効果について、スピン自由度を有するボソン系超流動について研究、低エネルギー領域で完全透過するという、いわゆる「異常トンネル現象」がこの系でも起こることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度はじめに計画した2つの課題:(1)超流動転移温度以上での擬ギャップ現象の温度依存性、(2)トラップ効果を加味しての超流動転移温度以下への拡張、はいずれも達成でき、前者は論文として公表済み、後者も論文準備中である。これに加え、空間の非一様性に起因する局在励起状態の生成や自発超流動流発現の可能性、および、スピン自由度を有する超流動におけるトンネル効果の性質などの解明も行うことができ、当初の計画以上の成果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、フェルミ原子ガス超流動のBCS-BECクロスオーバー領域における擬ギャップ現象に対する理解を更に深める研究を推進する。これまでは実験データとして、光電子分光型スペクトルを中心に議論してきたが、それ以外の物理量に擬ギャップ効果がどのように現れるかを研究、今まで以上に実験研究へのインパクトがあるような理論的成果を目指す。また、トラップ効果だけでなく、この系の操作性の高さを利用した次元効果やクーパー対対称性、双極子効果などについての研究を開始することで、様々な状況下での「超流動揺らぎに起因する強結合効果、擬ギャップ現象」の解明を目指す。
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