研究課題
原子や分子では、核からのクーロン力の作用を受けて、電子が核を周回している。このクーロン力の大きさに匹敵する大きさのローレンツ力が電子に作用する高磁場中に原子や分子がある場合、ローレンツ力により電子の軌道が歪曲されるため、1次ゼーマン効果などの摂動的解釈では説明できないエネルギー構造の変化が期待され、化学反応のダイナミクスにも非摂動的変化が期待される。核融合炉中では、プラズマが数Tの強度の磁場(閉じ込め磁場)の作用により局所に拘束(閉じ込め)られている。より高い閉じ込め磁場を印加することにより、閉じ込め効率が向上する。したがって、プラズマ構成粒子である原子や分子あるいはそれらのイオンの、10T程度の高磁場中におけるエネルギー構造や反応ダイナミクスを解明することが核融合の実用化のために重要である。超伝導電磁石(10T)の磁場発生領域に真空槽を挿入した。この真空槽は非磁性材料で製造された油拡散ポンプで排気され、内部にホロカソードが設置されている。装置の性能試験のため、ホロカソードに水素分子気体を減圧弁を介して導入し、ホロカソード電極への高電圧印加による放電で、水素原子および分子プラズマを生成した。プラズマからの発光線を光ファイバーを経由して可視分光器に導入し、発光強度を分光測定した。水素原子、水素分子の発光線と共に、不純物の発光線が観測された。油拡散ポンプの動作油の真空槽内への拡散も確認され、将来の真空紫外光の分光測定やMCPによるイオン検出の障害となると判断し、漏れ磁場の少ない位置にターボ分子ポンプを設置して真空排気した。真空槽にNO分子線を導入し、共鳴2光子電離により生成されたイオンを検出し、イオン検出の試験も行った。
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