研究課題/領域番号 |
22540423
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研究機関 | 中京大学 |
研究代表者 |
六車 千鶴 中京大学, 国際教養学部, 教授 (80319219)
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キーワード | 分子シミュレーション / 拡張アンサンブル法 / 液体-液体相転移 / 液体-固体相転移 / monatomic water(mW)ポテンシャル / L-jポテンシャル / 結晶氷 / アモルファス氷 |
研究概要 |
平成22年度に引き続き、次の2つを明らかにする目的で、マルチカノニカル(MUCA)、isobric-multithermal(MUTH)、およびmultibaric-isothermla(MUBA)の3種類のアンサンブルで立方体セルでのモンテカルロ(MC)計算を並行して行っている。水分子間の相互作用にはMolineroらのmonatomic water(mW)モデルを用いている。 (a)低温・高圧条件下での水の"液体一液体相転移"や"第二臨界点"の存在可能性、 (b)大気圧下で最大密度である4℃の水から結晶氷が生成するメカニズム。 (a)では、(i)氷Icに近い構造と(ii)過冷却水に近い構造をもつ2つの状態について、180Kでの216個の水系のMUBAアンサンブルでMC計算を行い、重み因子を求めている。状態(ii)ではいつくかの体積範囲で相転移と思われる変化が認められたが、相転移圧力付近で異なった状態の体積範囲が広く重複し、サンプルしている体積とエネルギーの範囲が状態によって大きく異なっていた。そのため、低圧→高圧と高圧→低圧の変化を同一の重み因子で、しかも体積の関数として表すことが困難と思われた。そこで、他の系でも同じ傾向が見られるかを調べるために、256個のL-J流体系でのMUBA MC計算を行い、重み因子をほぼ決定したところである。L-J流体系では体積の関数として同一の重み因子で圧力変化を表すことに問題はなかった。 (b)では、1気圧での64個の水系のMUCA MC計算と、64個および216個の水系のMUTH MC計算によりそれぞれの重み因子を求めている。MUCA MC計算では、(iii)水→結晶氷、(iv)水→アモルファス氷→結晶氷、(v)結晶氷→水の変化がサンプルできたので、計算途中で得られたラフな重み因子を精製しているところである。ここでも、(iii)水→結晶氷と(v)結晶氷→水の経路は相転移温度やエネルギーがかけ離れており、同一の重み因子で記述するのが困難であることがわかった。64個および216個のmW水系のMUTH MC計算では、(v)結晶氷→水の変化は容易にサンプルできたが、水からは常にアモルファス氷がサンプルされるので、結晶氷へと変化する方法を探っているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(a)に関しては、圧力変化に対する相転移を、体積の関数として同一の重み因子で表すことが困難であることが、(b)に関しては、分子シミュレーション計算で水から結晶氷への変化をサンプルするのに工夫が必要であること、(a)と同様に同一の重み因子で相転移を記述するのが困難であることが判明し、方法を探っている。 現在は完治したが、平成23年度の途中から病気治療をしていたので、エフォート40%が達成できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
(a)については、256個のL-J流体系でのMUBA MC計算を継続して行い、液体→固体と固体→液体の変化に対して系の構造や物理量の変化の有無を調べ、結果を研究論文として発表する。水系のMUBAMC計算については、binサイズを調節して重み因子の変化を調べてみる。(b)については、64個の水系のMUCA MC計算は継続して(iii)水→結晶氷、(iv)水→アモルファス氷→結晶氷、ov)結晶氷→水それぞれの重み因子を精製する。水、アモルファス氷、結晶氷を区別できる指標を考える。64個および216個のmW水系のMUTH MC計算については、MUCAMC計算の方法と比較しながら原因を探り、水から結晶水への変化がサンプルできるよう工夫する。水、アモルファス氷、結晶氷を区別する指標があると便利なので、研究全体を通して検討する。
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