研究概要 |
生体分子は、環境媒体である水中で機能する。生体分子の機能を物理化学的に理解するには、生体分子溶液の構造物性を解明することが不可欠である。本研究では、X線自由電子レーザー(XFEL)計画により今後の発展が期待されるX線回折顕微法と、高精度計算科学を組み合わせることにより、生体分子溶液の構造物性を高分解能で解明するための方法論を開発することを目的としている。平成22年度は、リボソーム溶液の構造解析を目指して次の成果を得た。 溶液中のリボソームの低分解能(~2nm)イメージングを実現するために必要な実験条件を、計算機実験を援用して見積もった。具体的には、リボソーム溶液の粗視化モデルを用いて、溶液中の複数粒子にXFELを照射したときの2次元回折画像のシミュレーションを行った。ここでは、検出の際のポアッソンノイズ等、実験で想定される影響をシミュレーションに含めた。次に、2次元回折像から実像を得るための手法であるShrink-wrap HIO法を利用し、回折画像の計算値から2次元実像の回復シミュレーションを実行した。その結果、リボソーム溶液の2次元イメージングが,100nmに集光したXFELによる溶液散乱実験で実現可能であることが明らかになった。つまり、XFELを利用することにより、30nmサイズのリボソームの溶液構造を2nmの分解能で解析することが可能となることを示した。結果は、現在投稿準備中である。
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