研究課題
1.マントルオーバーターンの理論解析月のマグマオーシャンの結晶分化過程とマントルオーバーターンが理想的に進んだものと仮定して、それが月の慣性能率に及ぼす影響を推算した。その結果、月の慣性能率の観測値が持つ均質球からの偏差が、月に金属核を置くことなくマントルオーバーターンのみによってもおおよそ説明可能であることが分かった。この見積もりはマントルオーバーターンによる月内部の安定成層の最大値を与えて評価しており、より現実性のある見積もりを行うには、その後の月マントルの進化によって成層がどの程度破壊される可能性があるか追及する必要がある。2.流体数値シミュレーションマントルオーバーターン現象ならびにその後のマントル進化をシミュレートすることを目的に、水星を念頭に置いた流体数値モデルを用いたテスト計算を行った。組成一様、放射性熱源なしの条件で粘性率の比較的高い状態から出発してシミュレーションを行ったところ、水星のマントルは10億年のタイムスケールで急激に冷却し、粘性率の増加と相まって、温度分布は静止系の熱伝導解に漸近することが分かった。これは対流過程による熱輸送を、混合距離理論によって表現した球対称モデル計算と調和的であった。3.月の火成活動・分化の地質記録サーベイ理論的解析と比較する目的で、最近進展の著しい月マントルの進化についての地質学的研究のサーベイを行い、火成活動の開始と活動期、継続時間について知見を整理し、公表した。
2: おおむね順調に進展している
理論的考察を行うためのシミュレーションモデルの構築や対比すべき観測量のコンパイルが進み、最終年度にスムースに移行できると判断している。
マントル出発物質の幅の考察、シミュレーションモデルを用いたパラメタスタディ、観測量との対比を進め、マントルオーバーターンのもたらす月・小型惑星のマントル進化への影響について理論的解明を進める。
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