研究課題
1. 月マグマオーシャンの結晶分化:固化に伴い形成される沈積層の密度、化学組成、温度分布を求めることを試みた。岩石学分野で広く流通している相平衡計算ソフトウェアは、大溶融度系に対しては実験データと整合しないため、経験的分配則を併用して推算を行った。マグマオーシャンの初期の組成や深さにあまり依らず、結晶分化の進行に伴い、浅部ほど密度が上昇する重力的に不安定な成層構造が形成され、そこから数値的に見積もられるオーバーターンの時間スケールは、 月の年齢よりも十分に短いことが確認された。また、不安定な成層が、上下混合なしに理想的にオーバーターンした場合の慣性能率を求めた。その結果、いずれの初期組成から出発しても、観測に極めて近い値が得られた。これは、結晶分化による密度差の形成によって、月の慣性能率因子が密度一様球よりもわずかに小さいことをほぼ説明でき、金属核を持たない月内部構造が許容されることを示唆する。さらに、固化した鉱物がリキダス温度を保持していると仮定し、温度分布を求めた。その結果、結晶分化完了時には沈積層全体で数百Kの温度差が生じる可能性が示された。ここから沈積層下部の鉱物の上昇に伴い、減圧融点降下によって再溶融が生じる可能性が高いことも分かった。これは月の表面に存在する苦鉄質鉱物が高いMg濃度を持つという観測結果と整合的である。2. 水星マントルの熱進化:最新の探査データから、水星の岩石マントルが従来の推定よりさらに薄い可能性が高いことが判明したため、これを取り入れた水星マントル対流の再計算を行った。その結果、水星岩石圏は急激に冷え、対流活動は初期の数億年で衰えるが、熱伝導のみによっても深部の冷却が進行し、溶融核の対流運動が現在まで持続する新たな解を得た。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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