研究概要 |
海溝型地震の予測・予知のためには、繰り返し地震を発生している領域であるアスペリティや地震を発生せずに滑りを起こしている領域(非地震性滑り域)の空間分布を精度良く明らかにする必要がある。そのためには、直上である海底において地震波の帯域から測地帯域までの観測が必要である。地震波帯域では、地震研究所が開発した広帯域海底地震計により、数十Hzから数百秒程度までの観測が実現している[金沢・他、2009]。測地帯域での観測では、GPS-音響結合(GPS/A)方式による海底水平変動観測が実用化されつつある[藤本、2009]。しかしながら、GPS/A方式は、その計測方法の制約により、半年から数年以上の累積的な水平方向の変化を計測する。数百秒から数ヶ月にわたる帯域での海底の上下変動を観測するためには、高精度の水晶発振子を用いた圧力計が適している。さらに、圧力計は数秒よりも短い周期まで観測可能であり、津波計としても利用可能である。そこで、現在使用されている長期観測型海底地霞計に、圧力計を付加することにより、地震波の帯域から測地帯域までの超広帯域長期観測を可能とする海底地震計を開発することを目的としている。平成22年度は、使用する圧力計センサーをカタログデータなどを用いて、選定した後、評価を行った。その結果、圧力変動計測に関して十分な分解能を有していることが確認された。さらに、現在地震研究所が用いている長期観測型海底地震計用レコーダを基にして、記録を行うレコーダの開発・改良を行った。その後、圧力計センサーの耐圧容器への取り付け方法の検討及び記録システムの設置方法について検討・設計を行い,試作機を開発した。開発した海底圧力・地震計は、観測データを取得するために、平成23年1月に、南海トラフに設置した。設置した海底圧力・地震計は、平成23年度に回収する予定である。
|