本研究は、地球のコアに対応する100万気圧を超す超高圧高温条件下で、金属化したキセノン(Xe)が鉄や珪酸塩と化合物や固溶体を作るか否かを実験によって明らかにし、それらの結果をもとに、長年地球科学の分野で未解決の大きな問題として残されている、いわゆる"Missing xenon"問題の解明に寄与することをめざしている。 初年度は、物性研のわれわれのグループで長年開発を続けその利用技術も確立している、Xeガスの液化充填装置とマルチメガバール領域でのX線その場観察実験技術を組み合わせ、Xeと鉄の200GPa近い領域までの高温高圧実験を行った。物性研においてXeと試料をダイヤモンドアンビルに詰め、それをSPring-8のBL10-XUに持ち込んで、加圧と加熱を段階的に行いながらX線回折実験を繰り返した結果、実験された圧力温度領域内では新化合物は生成せず、観測された各相の体積から、固溶が起きている様子も無いことが明らかにされた。またこの結果は、この圧力温度領域で安定なFeと金属化したXeが共にhcp構造の金属になってはいるものの、その原子体積が大きく違うということで理解できることが明らかになった。 今後はさらに温度領域の拡大に力を注ぎ、鉄が溶融した場合の反応についての実験的確証を得るよう努力することと、ニッケルは鉄よりXeと反応しやすいという理論的予測があることから、純鉄だけでなく、鉄-ニッケル合金との反応についても実験を行いたいと考えている。これらの結果を踏まえて、地球深部におけるXeの可能な存在形態に関して議論を行う。
|