研究概要 |
本研究の目的は,比較的単純な噴火形態を繰り返す火道システムの確立した火山を対象に振動現象の観測データから,火道浅部の内部状態を推定する方法を確立し,一連の噴火活動中での噴火様式変化の推定に結びつけることである.この研究目的を達成するため,1)数理モデルをベースに,火道が閉塞状態及び開放状態であったときの微動・長周期堆震を見直し,火道浅部での流体の噴出率と微動・長周期地震活動との関係を明らかにする,2)確立した火道システムを持つより広範な火山への適用を視野に入れ,火道長,流体噴出率,火道への流体圧に注目した室内実験を行い,より一般的に火道内部の状態と期待される振動現象との関係を明らかにする,という2つのアプローチからこの研究課題の達成を目指す. 第1段階については,初年度から進めてきた観測データを用いて励起に関わる非線形微分方程式の形式に関する情報を直接推定する解析手法の開発を継続し,2011年11月に浅間山で集中的に発生した継続時間の長いN型地震の解析に適用して解析を進めた. 第2段階については,2011年霧島新燃岳噴火において,火口近傍の観測点で準プリニー式噴火から火口内マグマ蓄積,ブルカノ式噴火と種々の噴火現象に伴う地殻変動・微動・空振の観測に成功した.そこで,当該年度はこれらのデータ解析に重点を置いて研究を進めた.その結果,種々の噴火現象に先行する傾斜変動の検出や,微動と空振が同様の励起源から発生するメカニズムを,粘性の異なるアナログ物質を用いた実験により再現に成功した.また,空振データを地震動データの相互相関を取る事で,微弱な火口活動のシグナルを検出する手法を確立し,浅間山や霧島新燃岳の噴火活動に適用してその有効性を検証した-さらに,この成果を欧文誌に公表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた桜島やストロンボリ火山などの微動,長周期地震データの取得は遅れているが,2011年霧島新燃岳噴火により各種の噴火現象に伴う地殻変動,微動,空振データを得る事が出来,当初の研究目的を達成するに十分な観測データは取得できている、さらに,解析手法の開発,実験による検証等も順調に進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
当初予定した研究課題の他に,2011年霧島新燃岳噴火の際に,火口内マグマ蓄積過程において,周期約1時間の傾斜変動が観測され,それと同期した微動発生も確認された.これは,本研究計画をスタートする時点では想定されていなかった観測データであるが,火道内のマグマ上昇,蓄積過程を理解する上で貴重なデータである.そこで,今年度は,これらの観測データの解析も含めて,当該研究目的に達成を目指す.
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