研究課題/領域番号 |
22540432
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
角森 史昭 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (60291928)
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キーワード | 地震災害・予測 / 地震先行現象 / 地下水ラドン |
研究概要 |
地下水溶存ラドン濃度の連続観測に適した小型高性能の測定システムを開発し、実際の観測に適用して有効性を確かめた。この装置を使った観測結果に基づいて、地震に先行する地下水ラドン濃度の異常変化を説明するための物理モデルの提案を行った。 2010年は、1978年の伊豆大島近海地震に先行した地下水ラドン濃度の異常減少を説明するために、2006年に提案されたVolatilizatonモデルを適用した。観測された現象は、地震発生前に2%程度の気相が帯水層内に生成した、という描像を有効と考えれば説明できることを示した。この成果は、地下水溶存ラドン濃度の変化を統一的に説明するモデルの基礎となり得る。 2011年は、地下水溶存ラドン濃度の連続観測に適した小型高性能の測定システムを開発し、中伊豆観測点で従来から使用されてきたラドン計との入れ替えを実施した。この装置の特徴は、サイズが従来の1/30となり、検出限界が1/10に向上し、能動的ラドン抽出装置による時間分解能の向上がなされたことである。この装置による測定は2010年10月から継続されており、2011年3月の東北地方太平洋沖地震の前の地下水ラドン濃度の変化を検出できた。このほか、非自噴井において地下水溶存ラドン濃度を測定しながら、観測井の水位を同時に測定するシステムを実現化し、鎌倉観測点でテストを行った。これらの成果は、ラドンを始めとする地下水溶存ガスの通常時の濃度変化と地震に先行するような異常変化の機構を調べる有力な情報を提供している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2010年6月の現地調査に基づき、台湾花連市新城に観測点を設営することを決定し、観測点設営の許可を共同研究者の協力で申請した。当初の予定では、2011年1月に設置許可が下り、2011年2月に観測点を設置する計画であった。ところが、関係当局の都合により、2012年4月以降に設置することになった。しかし結局、現地での連続観測は実現できないこととなってしまったので、定期的な観測による測定および既存の中伊豆観測点での観測と計画実行に切り替えた。本計画の目標である「地震先行過程発現機構の解明」については、中伊豆観測点における、2011年3月の東北地震の前の地下水ラドン濃度の観測結果から、非常に良い成果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
2011年東北地方太平洋沖地震に先行する地下水ラドン濃度の異常変化を、修正Volatilizationモデルを用いて説明し、正と負の両方の異常を示す地下水ラドン濃度の変化を統一的に説明するための基礎を提案する。また、東北地震の後に首都圏にある活断層である三浦半島断層群と立川断層帯について周囲の地下水ラドン濃度の調査を行い、当該地域において観測が実施できないかを検討する。
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