地下水溶存ラドン濃度の連続観測に適した小型高性能の測定システムを開発し、実際の観測に適用して有効性を確かめた。この装置を使った観測結果に基づいて、地震に先行する地下水ラドン濃度の異常変化を説明するための物理モデルの提案を行った。この研究の大きな目的である「地震先行過程発現機構の解明」は、第一段階を突破することができ、モデルに基づいた実験的な観測によってそのモデルの妥当性をさらに検証する段階へ進む成果を得ることができた。 2010年は、1978年の伊豆大島近海地震に先行した地下水ラドン濃度の異常減少を説明するために、2006年に提案されたVolatilizatonモデルを適用した。観測された現象は、地震発生前に2%程度の気相が帯水層内に生成した、という描像を有効と考えれば説明できることを示した。 2011年は、地下水溶存ラドン濃度の連続観測に適した小型高性能の測定システムを開発し、中伊豆観測点で従来から使用されてきたラドン計との入れ替えを実施した。この装置の特徴は、サイズが従来の1/30となり、検出限界が1/10に向上し、能動的ラドン抽出装置による時間分解能の向上がなされたことである。 2012年は、2011年東北地方太平洋沖地震に先行する地下水ラドン濃度の異常変化を、修正Volatilizationモデルを用いて説明し、正と負の両方の異常を示す地下水ラドン濃度の変化を統一的に説明するための基礎を提案した。また、東北地震の後に首都圏にある活断層である三浦半島断層群と立川断層帯について周囲の地下水ラドン濃度の調査を行い、異常な変化は起きていないことを確かめた。
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