研究課題/領域番号 |
22540433
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
ゲラー ロバート 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (40170154)
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キーワード | 地球内部構造 / 地震波形インバージョン |
研究概要 |
本研究の目的は、広帯域地震波観測アレイネットワークの実体波波形をもちいて波形インバージョンによる3次元深部構造推定である。 当該年度前半において、Geller & Ohminato 2004のアルゴリズムを導入し3次元カーネルを計算する環境を整え、効率よく計算できるように開発し、応用することで、マントル内、もしくは核を含めた内部構造変化に対して、地震波がどう変化するかを視覚化した。これにより、次神学的に深部構造を推定する上での解像度を評価できる。 また、推定するパラメタを1次元から3次元に拡張した上での実体波波形インバージョンを行った。これまでは、S波速度1次元構造についての推定を行なってきたが、3次元での推定は、高速計算機に対しての最適化が間に合っていないため行われていなかったが、Geller & Haraにより定式化されていた3次元構造推定のための波形インバージョン手法を行うための計算ツールを開発して、大量データの扱いに対する効率化を行い、かつ計算を高速計算機に最適化することで実現した。初めての応用は、南アメリカにおける地震を、北アメリカで観測したものを用いて中央アメリカ下最下部マントル構造に対して行った。推定されたパラメタはSH波3次元速度パラメタである。 本研究で開発されてきた波形インバージョンは大量波形データを系統的に取り扱うことに長けており、北米や日本が有する観測網による稠密な波形データセットを用いることで、これまでにない高解像度での微細構造推定が可能となる。本研究において、SH波に対する速度構造を推定したが開発された手法はP波速度など他の弾性パラメタを3次元推定することにも応用できる。また、本研究で実現される解像度での深部構造推定には例がなく、地球内部におけるダイナミクスの理解に対して大きく貢献できると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3次元構造推定に必要な手法の開発は順調に進み、計算機の演算能力の向上もあり、その応用もスムーズに進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
可視化された弾性パラメタに対する地震波の持つ情報に対して、より効率の良い求めるモデル空間を構築する。 本研究により拡張された手法を、P波パラメタ、異方性を含めた速度構造推定に対して応用する。 液相に対する地震波形インバージョンの定式化、及びその実装を目指し、外核を含めた構造推定を目指している。 最外核とマントル最下部構造の同時推定から、地震学的な構造推定によるお互いのトレードオフを見積ることができ、また得られた構造により、コアマントル境界領域におけるダイナミクスの描像を得ることを目的としている。
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