研究概要 |
本研究計画は,惑星の質量,軌道要素,中心星の光度及び年齢等の条件に対して多数の数値計算を系統的に行うことによって,太陽系外地球型水惑星が取り得る気候モードの条件を明らかにしてその多様性を予測しようとするものである. 初年度においては,地球型水惑星環境モデルの開発を行った.地球型水惑星環境モデルは,気候モデルと炭素循環モデルの2つのモジュールで構成される.気候モデルとしては,計算速度の観点から,惑星放射の二酸化炭素濃度依存性を考慮した南北1次元エネルギーバランス気候モデルを採用した.また,炭素循環モデルとしては,まずは二酸化炭素収支を大局的に評価する目的で,惑星内部からの二酸化炭素の脱ガスと大陸の化学風化作用及び海洋における炭酸塩鉱物の沈殿による二酸化炭素の消費を考慮した.化学風化反応のカイネティクスについては,簡単のため,大陸地殻を構成するケイ酸塩鉱物の活性化エネルギーの平均的な値を用いた.そして,軌道長半径,軌道離心率,自転軸傾斜角等の条件を系統的に変化させた場合に実現される気候状態を求めた.さらに異なる初期条件(温度分布)から出発して異なる定常解が実現されるかどうか(多重平衡解が存在するかどうか)についても調べた,その結果,炭素循環を考慮しない場合について,多重平衡解領域をパラメータ空間においてマッピングをすることができた.また,炭素循環を考慮した場合には多重平衡解が得られず,解の分布が大きく変化することなどの予備的な結果を得た. 今後は,海洋の熱輸送及び熱容量・潜熱を考慮することで,より現実的な平衡解を導出するとともに,火成活動による二酸化炭素供給率に対する依存性等,モデルの基本的な挙動特性を詳細に調べる.また中心星の進化と惑星の熱進化も考慮して検討を行う予定である.
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