研究概要 |
以下の事項を実施し、成果を得た。 (1)月磁気異常図の分解能向上 磁気異常値は高度依存性が大きいため、衛星軌道の高度補正を行う必要がある。本研究では、磁気ポテンシャルの境界値逆問題として取り扱う理論・解析アルゴリズム(Toyoshima et al.,2008 ; Tsunakawa et al.,2010)を適用して、低高度(30km)の磁気異常図を作成し、学会等にて発表した。 さらに、独自に開発中の月表面3成分磁場マッピング法により、月面全体の磁気異常磁場3成分マッピングを行った。使用したデータは、KaguyaとLunarProspectorの低高度観測結果である。MareIngenii地域(15度×15度)について、別々に月面マッピングを行って比較し、月面マッピングのデータ依存性をチェックした結果、相関係数0.9以上という高い一致度を示した。次に、KaguyaとLunarProspectorの複合データを使い、月面を0.2度と0.1度のGeneralizedSpiralPoints(GSPs)で分割し、磁気異常のパターンを比較した。その結果、磁気異常パターンはGSP間隔にほとんどよらないことがわかった。このことから、磁気異常について1度以下の波長成分は観測ノイズレベルであることが示唆される。 (2)磁気異常ソースのモデル化 ・当初計画に基づき、スポット状の磁気異常のソースを磁気双極子として近似し、磁化方位を求めて。その結果を解析し、月の古磁気極の分布を求めた(投稿中)。古磁気極は3つの地域に集中し、40億年前の月には双極子磁場があり磁極逆転もしていたこと、月コアダイナモが存在したこと、真の極移動があったこと、が示された。 ・「かぐや」観測データ解析から線状磁気異常が発達していることが明らかになった。このことを受けて、古応力分布の観点を入れた磁気異常構造の解析を行った。
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