平成22年度は、まず、世界各地のプレート沈み込み帯で発生した大地震の余効変動に関する知見を集める目的で文献調査を行った。余効変動についてまとめられた過去の研究論文リストを作成し、余効変動の規模、継続時間、時定数、推定されたメカニズム等について整理した。その結果、過去の大地震の中では1960年チリ地震、1964年アラスカ地震、2004年スマトラ・アンダマン地震が地震および余効変動の規模の両方の観点から最も顕著な事象と考えられることが確認され、これらの余効変動に関する情報収集を平成23年度以降も継続することとした。 また、応力場の時間変化を考慮した余効すべりの力学モデル構築を目的とした検討を開始し、媒質の粘弾性緩和と断層の摩擦すべりの相互作用に関する定性的な考察を進めた。今後、解析プログラムの開発を進める予定である。 平成22年度末の3月11日には、東北地方の太平洋沖でM9.0の東北地方太平洋沖地震が発生した。この地震は上に上げた3つの巨大地震に匹敵する規模の地震であり、今後、本研究の主要な研究対象である顕著な余効変動が長期間にわたって継続する可能性があると考えられるため、この地震の解析を本研究の課題の一部と位置づけることにし、GPSデータ解析による余効変動の監視システムを構築し、余効変動の解析を開始した。本震発生後1ヶ月以内に日本列島の広範囲で10cmを越える余効変動が生じており、今後の推移が注目される。 以上の他、計算機・ソフトウェア等を購入し、研究環境の整備を進めた。
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