研究概要 |
平成23年度は,まず,3月11日に東北地方太平洋沖地震が発生し,本研究で想定していた巨大地震に伴う大規模な余効変動が観測されることが予想されたことから,この地震に伴う地殻変動の詳細な検討を行うことにした.その結果,地震時に大規模に沈降した東北地方の太平洋沿岸において,顕著な余効変動が生じているものの,地震時の変動を打ち消す程大規模な余効変動は生じないことが分かり,余効変動のみで地殻変動の収支を合わせることが難しいことが明らかになってきた.そこで,余効変動も含む,巨大地震の繰り返し全体を検討することが重要であるとの認識に至り,様々なデータの総合的な検討を行った結果,東北地方の巨大地震発生に伴う地殻変動サイクルに関する仮説を得た.これは,20世紀後半に東北地方で見られていた地殻変動が,太平洋プレートの沈み込み境界面で発生するプレスリップによるというものである. また,種々のデータについて検討する中で,東北地方の三角測量データで東西短縮が見られていなかったことに関して,明治時代に行われた基線測量が,実施直後に近隣で発生した庄内地震の影響を受けている可能性を発見した.この結果もまた,東北地方太平洋沖地震の準備過程を理解する上で大変重要な意義を有するものである. 以上のように,プレート境界で発生する巨大地震の一つとして,東北地方太平洋沖地震に関してデータの分析が進み,プレート境界のすべりと陸上の地殻変動に関する理解が大きく進展した.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,平成23年度に得られた結果に基づき,現在も進行中である余効変動の効果も考慮して,プレート境界におけるすべり収支の定量的なモデル化を目指す.また,研究成果をまとめて学会発表するとともに論文を執筆して国際学術誌に投稿する.
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