(1)インドネシア・ジャワ島およびバンダ海下で発生した稍深発大地震のすべり伝播特性を、日本・インドネシア広帯域地震観測網およびIRISで収集された波形データのモデリングによって推定した。これらの地震の波形には、明瞭な複数のサブイベントがみえており、特に前者の地震では、近地観測点データを使用することにより、高い信頼度で、精度よくサブイベントの相対位置を決定できることがわかった。解析手法を更に工夫することによって、サブイベントの広がりや破壊伝播速度の不均質を検知できる可能性がある。 (2)前述のジャワ島稍深発大地震に対して、日本のHi-net観測網をアレイデータとして利用し、サブイベントの相対位置を推定した。直達P波から決定した相対位置は、波形モデリングで得た結果と調和的であった。一方、アレイデータで決めた位置決定の精度は、近地観測点を含めた波形モデリングよりも悪いこともわかった。詳細な位置関係を議論するには、近地観測点を利用した波形モデリングの方がよい。また、本研究の結果は、pP・sP波のアレイデータをあわせて用いたKiser and Ishii(2011)の結果と異なっており、pP・sP波を使用した彼らの解析における問題を暗示する。 (3)Engdahl et al. (1998)再決定震源カタログやグローバルCMTカタログを利用し、世界のさまざまな沈み込み帯での地震の深さ分布を調べ、沈み込み帯間の特徴を比較した。いずれのカタログでも、沈み込み帯に関わらず、深さに対する地震の数の傾向が、深さ75-100kmを境に変化することがわかった。これは、プレートによるウェッジマントルの引き込みが深さ約75km以深でのみ起こるというWada and Wang(2009)の温度モデルと調和的にみえる。
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