特徴的なすべり伝播がみつかっていた、ジャワ島下で発生した稍深発大地震のすべり伝播特性を、広帯域地震観測網の波形データのモデリングによって引き続き調査した。震源付近で小さなすべりが生じた後、数秒して大きなすべりがほぼ同じ深さで発生するが、このすべり伝播をモデリングすると、遅いすべり伝播速度を好むことがわかった。 稍深発地震の動的モデルとして、すべり伝播速度を抑制しうる要因を検討した。特に、プレート内に存在する可能性がある水が関与する動的破壊伝播を対象に、相変化や空隙率の変化がすべり伝播速度を抑制する性質をもちうるか、調べた。地球内部は深さが深くなると、圧力と温度が高くなる。圧力と温度の上昇により、水は液体から超臨界水に相変化することが予想され、この相変化に関係して水の物性値は大きく変化する。超臨界水への相変化に伴う物性値の変化を考慮した上で動的破壊への影響を調べたが、この相変化がすべり伝播速度へ与える効果は極めて小さいことがわかった。一方、空隙率の動的変化はすべり伝播速度を若干抑制しうることがわかった。 加えて、Engdahl et al.(1998)の再決定震源カタログやグローバルCMTカタログなど、複数の震源カタログを利用して、沈み込み帯における稍深発地震の深さ分布の特徴、沈み込み帯間の特徴の比較についての調査も継続して実施した。これらにおいて複数の沈み込み帯に系統的にみられる稍深発地震頻度の深さ変化を起こしている物理的要因を更に調べるために、頻度の深さ変化が起こる以浅に発生する稍深発地震の地震波形データを調査したところ、稍深発地震が起こる直上のマントルウェッジを伝播するP波とS波で、低速度域内を伝播した証拠と思われる後続波をみつけることに成功した。
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