稍深発地震が発生する海洋プレート内部の温度構造を左右する構造を検出した。稍深発地震から放射されるP波とS波に後続波が観測されることを用いて、稍深発地震がおこる海洋プレートの上に地震波低速度領域をみつけた。この低速度領域は厚い大陸地殻の存在あるいはマントルウェッジの蛇紋岩化によって説明できる可能性がある。大陸地殻あるいは低温の蛇紋岩が上部に存在することによって、稍深発地震が発生する海洋プレート内の温度は、高温のマントルが海洋プレート上部に張り出している場合より低くなり、海洋プレート内の温度勾配も変化する。稍深発地震から放射されるP波とS波に後続波が見られない隣接する地域では、高温のマントルが海洋プレートの上部に張り出していると考えられ、稍深発地震の活動がより浅部で消失している。 プレート内におこる地震の物理モデルとして、間隙水が関与するモデルで破壊伝播特性に影響する要因を精査した。特に動的空隙率の増加係数および透水係数と空隙率の関係則の影響を明らかにした。透水係数と空隙率の関係則の違いは最終すべり量に変化を与えるものの、破壊伝播速度には影響を及ぼさなかった。関係則が、破壊フロント通過後の過程に主に影響するためである。一方、動的空隙率の増加係数は破壊伝播速度に影響を与えた。動的空隙率の変化が、破壊フロントが通過し大きな応力降下を起こしたときに主に影響するためである。これらのことは、動的空隙率の増加係数が破壊伝播速度を左右する要因として有効であるだけでなく、破壊伝播速度の変化には、破壊フロントが通過しつつある最中に影響を及ぼす物理機構が不可欠であることを示唆する。破壊フロント通過後に効果がある物理機構は破壊伝播速度を支配する要因にはならない。
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