研究概要 |
平成24年度においては、1)日本の月周回機「かぐや」搭載XRSとインドの月周回機「チャンドラヤーン1号」搭載C1XSの観測データ解析、定性的な元素分布の導出、2)「粗さ効果」の室内実験結果のモデル化、3)今回の結果を考慮した将来の月面蛍光X線探査の検討、について研究を進めた。課題1については、Weider他(Planetary Space Sci., 60, 217-228, 2012)にまとめられている。蛍光X線観測を高いS/Nで実施できた領域が月面全球の10%未満である。大部分の領域が未解析で残ったものの、玄武岩質の海領域と斜長岩質の高地領域は明確に分離ができている。今回、一般的な岩石タイプに比べてAl/Siが20%以上高いという結果が出ている。これは未知な岩相の可能性、鉱物混合効果による影響の可能性、装置側の較正精度による可能性があり、将来のミッションによる再調査が期待される。課題2について、レゴリス状粉末試料のみならず、未研磨状態の岩石試料の粗さ効果についても調査した(天野嘉春他,第13回宇宙科学シンポジウム, 宇宙科学研究所, P2-158, 2013)。試料表面の粗さの影響や、線源・試料面・検出器の角度関係による依存性も実験的に調査した。その結果はH25年度に発表予定(Kusano他, AOGS2013, Brisbane, June 2013)である。課題3については、上記問題に対し、本研究に関連する観測機器の発展型を想定し、かつ日本の小型衛星計画の延長としての月周回機や、海外(例えば韓国)で検討中の月周回機ミッションを想定する場合に有効となる探査方法、機器構成について検討を進めた(e.g., Okada,COSPAR2012, Mysor, India, B0.1-0040-12, 2012)。これらを成果報告としてまとめた。
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