研究概要 |
ハドレー循環等の,熱帯対流圏の基本的な循環の理論においては,これまで内部に時間変動(積雲対流や波動等)を含まない静的なバランスで理解されてきた.しかし,最近の研究により時間変動成分の考慮が理解に欠かせないことが示唆されている.本研究ではこれを発展させて新しい熱帯循環論を打ち立て,さらに,気候学的に重要な層積雲域等での波動,循環,雲の関係を明らかにし,また,様々な気候モデルにおける現在気候再現性および将来予測への影響を明らかにすることを目的とする.本年度は以下の成果を得た. 大気大循環モデルを用い,全地表面を海面とした水惑星の設定で,多数パラメタによる多次元パラメタ空間を広くカバーする数値実験を行った.積雲パラメタリゼーションの可変パラメタを変えた実験により,対流と結合した波動がハドレー循環に与える影響を調べた.その結果,前者が後者を活発化することが明らかになった.一方で(特に海面水温勾配が小さい場合),上部対流圏における傾圧不安定が自発的に角運動量を調整することが循環の幅等に一定の影響を与えることも明らかになってきた(投稿準備中).過去20年間の衛星による雲量データと大気客観解析データを用いて,東部熱帯太平洋での下層雲の変動とその力学的要因を調べた.その結果,下層雲が卓越する南半球側では,赤道域の混合ロスビー重力波と,中緯度のロスビー波がともに,数日周期の下層雲変動を引き起こすことが明らかになった(投稿準備中).
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