研究概要 |
ハドレー循環等の,熱帯対流圏の基本的な循環の理論においては,これまで内部に時間変動(積雲対流や波動等)を含まない静的なバランスで理解されてきた.しかし,最近の研究により時間変動成分の考慮が理解に欠かせないことが示唆されている.本研究ではこれを発展させて新しい熱帯循環論を打ち立て,さらに,気候学的に重要な層積雲域等での波動,循環,雲の関係を明らかにし,また,様々な気候モデルにおける現在気候再現性および将来予測への影響を明らかにすることを目的とする.本年度は以下の成果を得た. 水惑星型の大気大循環モデルを用いて、ハドレー循環の基礎的な力学を明らかにした(Horinouchi,2012)。海面水温分布が全球一様から現実的な場合まで少しずつ変え、さらにそれぞれで積雲パラメタリゼーションに関する設定を複数変えて行った一連の実験より、対流と結合した波動がハドレー循環強度を左右することを示した。また、湿潤対流調節下では、従来のハドレー循環論において課された制約条件が機能しない(だからこそ対流と結合した波動が子午面循環を左右しうる)という根本的な問題提起も行った。 過去20年間の衛星による雲量データと大気客観解析データを用いて、東部熱帯太平洋での下層雲の変動とその力学的要因を調べる研究を発展させ、論文を投稿した(TeraoandHorinouchi, J. Met. Soc. Japanに投稿中)。本年度は、赤道域の混合ロスビー重力波と中緯度のロスビー波が下層雲を変動させるメカニズムを明らかにした。 IPCC第4次報告書作成に使われた気候モデルシミュレーションデータベースを用いて、熱帯の循環および降水分布と海面水温の関係がモデル間でどのように異なるか調べ、相関関係を明らかにした。
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