研究概要 |
Word Ocean Atlas 2005に収録されている北太平洋亜熱帯循環における水温・塩分・溶存酸素・栄養塩の気候値データを用いて、等密度面解析を行い、永年密度躍層を構成する4つの主要水塊である回帰線水、亜熱帯モード水、東部亜熱帯モード水、中央モード水に着目し、各水塊の等密度面に沿ったリン酸塩濃度・溶存酸素濃度の空間分布を調べた。その結果、各水塊の形成域で低リン酸塩・高溶存酸素となる傾向を見出し、水塊の形成域は低栄養塩として特徴付けられることがわかった。この特徴は、これらの水塊が表層混合層で形成され、沈み込む前に、一次生産によりリン酸塩が消費され枯渇することによるものと解釈できる。また、各水塊の移流経路に沿ってリン酸塩(溶存酸素)濃度は上昇(低下)する傾向を示した、地衡流速場から各水塊の移流時間を計算し、各濃度のラグランジュ的な時間変化率を求めたところ、リン酸塩濃度変化率に対する溶存酸素濃度変化率の比は、Redfield比と1~2倍の範囲で一致していた。この結果から,水塊の移流過程におけるリン酸塩・溶存酸素濃度変化は生物による再無機化過程の影響を大きく受けていることが示唆された。これらの特徴を北大西洋亜熱帯循環と比較するために、生物-物理モデル(NEMO-PISCES)の出力を解析した。その結果、北太平洋亜熱帯モード水が形成時に保持している栄養塩は、北大西洋亜熱帯モード水よりも豊富であるため、北太平洋亜熱帯循環亜表層の栄養塩濃度・酸素濃度の分布形成には、亜熱帯モード水が形成時に保持している栄養塩の寄与も重要であることが示唆された。
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