研究課題
気候変動予測に用いる海洋大循環モデルの高精度化には、サブグリッドスケールの乱流混合過程の適切なパラメタリゼーションが必要不可欠である。特に、中央海嶺や台風などの海洋内部重力波の励起源の近傍は、活発な乱流混合が集中するホットスポットとなっている。そこで、この励起源近傍の乱流混合ホットスポットの物理過程を数値的に再現するために、本年度はVery Large Eddy Simulation (VLES)モデルの開発をおこなった。VLESモデルは乱流運動の異方性を考慮することで、従来のLarge Eddy Simulation (LES)モデルに比べてより広い物理空間をカバーできる利点を持つ。本研究で開発したVLESモデルでは乱流スキームにZhang et al.(1993)のDynamic Mixed Modelを組み入れた。また内部重力波励起源の近傍では移流効果が卓越するため、数値分散を抑える移流スキームUTOPIAを導入した。この開発したVLESモデルを用いて、本年度は一定の密度成層を持つ理想的モデル海洋に一定の風応力を与えて得られる表層混合層の乱流混合過程の数値実験を行った。励起された近慣性内部重力波に伴う強いシアー流によって混合層下部に乱流混合が発生し、それが密度成層を破壊しながら混合層を成長させる様子が再現された。特に、古典的な乱流スキームであるSmagorinsky Modelを組み入れた計算では混合層下部の鉛直拡散係数が過大評価されて乱流混合過程がうまく再現されないのに対して、Dynamic Mixed Modelでは水平拡散係数に比べ鉛直拡散係数が抑制され流速シアーからKH不安定を介して乱流混合に至る物理過程が精度よく再現されることが確認された。来年度は、このVLESモデルに現実的な台風フォーシングと一般流を組み込み計算し、大気擾乱直下の乱流混合係数とその空間構造を明らかにする予定である。
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Journal of Physical Oceanography
巻: 40巻 ページ: 2569-2574
JOURNAL OF GEOPHYSICAL RESEARCH-OCEANS
巻: 115 ページ: 10.1029/2009JC005903