降水レーダは広範囲の降水分布をリアルタイム監視できるが、その降水強度には雨滴粒径分布(DSD)変動、降水粒子種別(雨、雪など)によるマイクロ波散乱特性の違いによる大きな誤差が含まれる。レーダ降水強度の高精度推定のため、レーダビーム内に存在する降水粒子種別とそのDSDの直接観測が必要である。本研究では、ラジオゾンデと共に小型気球で飛翔可能な、軽量、かつ、安価な降水粒子観測プローブの開発を行っている。平成22年度は小型・軽量化を考慮しない基礎実験機を開発した。この基礎実験機を使って、実際の降雨・降雪観測ができ、実用機に求められる仕様と改善項目が確認できた。厳冬の北海道陸別町で行った降雪観測では、降雪粒子の計測性能試験に加え、自然環境で-20℃の低温試験が達成できた。少なくとも、乾雪環境では光学部分に結露や着雪がなく、安定した雪の結晶・過冷却水滴の形状計測ができた。降水レーダが強い反射強度を示す融解層(0℃高度)は、雨、霙、雪など様々な降水粒子が混在する特異な層であり、融解層より1~2km上空の高度(-20℃)までを開発プローブの動作範囲に設定しているため、この低温試験は力強い結果である。また、サンプル数は5cm^2のセンシングエリアで150個/分の降水粒子を検出した。既製品の雨滴粒径分布計(センシグエリア50cm^2)の検出数が1500個/分程度であることを考慮すると、開発プローブは雨滴粒径分布計として十分なポテンシャルを持つことが確認できた。
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