研究課題/領域番号 |
22540448
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
民田 晴也 名古屋大学, 地球水循環研究センター, 技術専門職員 (80422765)
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研究分担者 |
津田 紀生 愛知工業大学, 工学部, 准教授 (20278229)
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キーワード | 気象学 / 自然現象観測 / 計測工学 |
研究概要 |
マイクロ波降水リモートセンシング技術向上のため、レーダビーム内に存在する降水粒子とその粒径分布(DSD)を直接観測が必要である。本研究では、軽量気球で飛翔可能な小型・軽量・廉価な降水粒子観測プローブ(1万円程度の高速レーザラインスキャン方式)の開発を行っている。最終目的は、上空のDSD計測技術の向上であるが、研究期間中は地上観測機器として評価を行っている。今年度は、プロトタイプ(ビーム幅16mm,有効光路長75mm)を作成し、実際の降雨現象の中で、既製品の雨滴粒径分布計(Distromet社RD-69/80)との比較観測を行いプローブの性能評価を行った。その結果、雨滴直径が2mm以下のレンジのDSDはよく一致した。しかし、光路長75mmのセンシングエリアでは、直径2mmより大きな雨滴粒子の検出数が少ない傾向にあり、光路長を140mmに変更し計測サンプリングエリアの拡大を図った。冬季の降雨では、大きな雨滴粒子の存在が少なく、サンプリングエリア拡大効果の評価は次年度の夏季観測実験に積み残されているが、自然界での存在数が多い直径1-2mmのレンジでは雨滴粒径分布計として十分な性能を示した。また、2月上旬に2日間だけであったが新潟県長岡市で降雪(豪雪)を観測することができた。氷点下では霰が、0℃を以上では雪片が多く観測された。現在のプローブのビーム幅16mmでは大きな雪片全体の形状計測は困難であり、鉛直方向の絶対計測分解能がなく降水粒子の縦横比が決められない欠点はあるが、観測結果は、プローブの降水粒子種別判定の可能性を示した。観測期間中、防災科学研究所のXバンド偏波レーダ、JAXA Ka帯レーダとの同期観測を行ったので、今後、これらレーダシグナルとの比較解析を行う予定である。現在、絶対鉛直分解能を確保するため、降水粒子側面のカメラ撮影の検討を行っているが、シャッター速度、光量、データサイズの問題から小型・廉価に実現できる結果は得られていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の課題であったプローブ改良点(ビーム幅を8mm→16mm;スライスレート18kHz→30kH2)は、今年度作成したプロトタイプで実現した。既製品の雨滴粒径分布計との比較実験を行い、雨滴粒子の形状計測評価に加え、雨滴粒径分布の計測能力評価を行うことができた。また、鉛直分解能の絶対計測を実現するカメラ撮影機能は実現できなかったが、冬季の固体降水粒子(霰と雪片)の計測実験ではレーダとの同期観測が行え、湿雪観測の経験を積むことができ、降雪観測に向けた初期データの取得ができた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度、プローブに求められる改善点は、(1)計測ビーム幅の拡幅と(2)鉛直絶対分解能の実現である。(1)ビーム幅の拡幅:大きなレンズを使用せずにビーム幅を広げる必要があり、ミラー方式はコスト面から困難であり、小型のレンズとレーザダイオードを並列に股置することを考えている。(2)鉛直分分解能:上下2ビーム化による計測時刻差から通過速度を得る手法、および、側方カメラ撮影による絶対分解能計測の実現を考えている。カメラ方式では、水平分解能はレーザ計測から正確に測れているので、速いシャッター速度で撮影ができれば、ピンボケした画像でも縦横比は得ることができるので、鮮明な画像計測を実現することは考えていない。 平成23年度の9月以降の降雨現象でプローブの性能評価を行ってきたため、激しい降水現象での観測事例が少ない。平成24年度は、梅雨・台風期の激しい降雨現象の中でのプローブの評価を行い、取得したデータから統計的な評価を行い、開発プローブが有効な結果を示す事例、逆に不得意とする事例について掘り下げた評価を行う。
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