近年の偏波降水レーダによる降水粒子種別判定と雨滴粒径分布推定アルゴリズム検証に有効な、気球観測による上空の降水粒子の直接観測を目標とした、軽量で使い捨て運用が可能な廉価なプローブ開発を行った。本研究期間中の目標は、降水粒子の形状計測とその粒径分布を計測する半導体レーザを利用したラインスキャナ型の粒子形状計測プローブを開発することにあり、気球観測自体は研究期間後の課題である。 今年度は、開発プローブの計測安定性を高め、使い捨て運用設計のプローブで降雨/降雪観測で数ヵ月間の連続観測が達成でき、地上観測機器としての完成度を高めることができた。また、プローブは既製品の雨滴粒粒径分布計と相似した雨滴粒計分布形状を観測することができ、観測機器としての信頼性が確認できた。完成したプローブの形状計測幅は16 mmであり、10 mmを超える大粒子の湿雪の全体形状計測には計測幅が不足するため、今年度の降雪観測で計測幅を48 mmに拡幅した降雪粒子専用の観測プローブを開発し、試験観測を行い、その有効性と今後の課題の確認ができた。但し、計測幅の拡幅はラインスキャン速度を低下させるため、落下速度の速い雨滴観測には不向きである。プローブの性能評価は、偏波降水レーダの観測レンジ内で行ったため、偏波レーダの偏波シグナル(雨や雪など降水粒子種別判別と雨滴粒径分布推定に利用可能なパラメータ)とプローブによる降水粒子画像と粒計分布の観測データベースが取得でき、今後、開発プローブの偏波レーダ観測技術向上への貢献度と降水メカニズム解明などの科学的意義の調査が期待できる。研究期間中はプローブ開発に注力し、取得データに対して十分な気象学的な解析はできておらず、今後の課題である。
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