研究概要 |
吹雪とは,雪粒子が空中を舞う現象であり,地域によってその発生条件や規模が大きく異なることが知られている.そこでグローバルスケールモデルに妥当な吹雪モデルを組み込むためには,気候帯の異なる地域における吹雪の特徴を適切に取り込む必要がある. そこで初年度は,吹雪粒子のナンバーフラックスを粒径毎に非接触でカウントする装置(スノーパーティクルカウンター,SPC)を改良して,積雪の南限域でありステップ気候に相当するモンゴル北東部Tuul川流域に設置したが,今年度の冬期にもスノーパーティクルカウンターを設置して,吹雪観測を継続することができた.加えて,ツンドラ気候に相当するアメリカアラスカ州Toolik湖周辺域にも同様のスノーパーティクルカウンターを設置することができた。 また,現有の吹雪モデルで再現される吹雪による昇華量の妥当性を検討するために,地表面や気象条件を自由にコントロールできる低温風洞実験装置(防災科学技術研究所雪氷防災実験棟)を用いて,積雪面の堆積・削剥・昇華に関する吹雪の再現実験を継続することができた.特に,吹雪時の雪粒子と風との相対速度,雪粒子の大きさ,気温,湿度との関係の解明に取り組んだ. さらに,グローバルスケールモデルへの吹雪過程の組み込みを念頭にして,吹雪モデルを陸面モデルに組み込む際の問題点の抽出や,各種地表面に対応したモデルへと汎用性を高めるためのモデル改良を引き続き継続した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の目的は,低温風洞実験,野外観測,吹雪モデルを駆使することによって多角的に解明することが大きな特徴である.これらはおおむね順調に実施されていることから,区分(2)に相当すると思われる.
|
今後の研究の推進方策 |
今後は,特に吹雪モデルを活用して得られる結果の解釈に力を注ぐ予定である.そのために,低温風洞実験や野外観測によって得られた結果と,吹雪モデルにより得られる結果との整合性を確認する予定である. これにより,大気に対してどれくらい吹雪における昇華が影響を及ぼすのか,多角的に解明していくことが可能となると考えられる.
|