人工衛星「あけぼの」搭載の放射線モニターによる地球放射線帯の観測を継続し、1989年3月から2011年3月まで、太陽活動周期11年の2倍に当たる22年間のデータの蓄積を続けている。このような長期間の放射線帯の高エネルギー電子強度の継続的な観測は、世界でも例がない。太陽活動周期の4つの相(発達、極大、減衰、極小)においての代表的な放射線帯外帯の高エネルギー電子の分布について、予備的な結果を得た。しかしながら、太陽活動は周期性から2010年にはかなり高くなり極大期になると予測されたが、低活動期が継続したため、太陽活動が高くなりつつある発達相での高エネルギー電子の分布についての信頼できるデータが不足している。さらに2年ある研究期間の観測の継続によって、より完全なデータとすることとする。一方、放射線外帯での急速な(1時間程度)高エネルギー電子強度の増加については2006年に、「磁気嵐中のサブストームが引き起こす大規模な双極子型への磁場変動中に誘導される電場によって、電子が加速と輸送される」というモデルを提案していた。この実証のために、2008年9月4日のイベントについて、太陽風のデータを入力として磁気圏の大規模構造についてモデル計算し、内部磁気圏の磁場と電場の時間空間分布を求め、その場の中で放射線帯変動のシミュレーションを行った。ほぼ期待されるように、高エネルギー電子が加速輸送されるという結果を得た。提案したモデルを実証するために、いろいろな場合に相当する多くのイベントについてシミュレーションを行いモデルの実証を目指せる基礎ができあがった。
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