研究概要 |
Geotail衛星における静電孤立波(ESW)の発見は、学会に大きな影響をもたらした。磁気圏の様々な所や太陽風中でも他に物体があった場合に,見つけられている。月周回衛星「かぐや」でも、太陽風が月に妨げられてできるウェイクの出入口はじめ、磁気異常上空など多数受信されている。周辺の電子密度は、しばしば受信されている電子プラズマ波の周波数から読み取れるほか、プラズマ計測器、磁場測器も搭載されているので、プラズマ環境に関する情報も得られる。 固有磁場を持たないために、月ウェイク領域はほぼ真空状態に近い状態になる。このとき、電子は夜側ウェイク領域に比較的侵入しやすいのに対し、イオンは熱速度が太陽風速度と比較して圧倒的に遅いためウェイク内部に侵入できないと考えられる。このため、ウェイク境界には電場が発生し、この電場によって様々な波動現象が観測されている。ESWには逆方向に流れる(counter streaming)ビームの存在が必要であり,ウェイク境界や磁気異常上の他,月表面で反射された粒子により,太陽風側でも受信されていることが明らかになった。 波動観測器には,ダイポールアンテナを二つのモノポールとするモードを有しており,受信波形を理想的な背景磁場に平行な成分と垂直な成分のESW波形に分けてフィッティングを行うことにより、ESWの特性の精度が増すほか、両者の時間差からESWの伝搬速度などを議論するとともに,観測場所との関係を比較した。プラズマ計測器のデータは,ESWと関係の深いビームの存在を求めて解析中である。 ESWとは異なるバイポーラ波形も多数見つかっており,磁気異常帯上空の波動や太陽風-月相互作用に起因するプラズマ波動などとして,伝搬モードの同定や,発生メカニズムなども追求した。
|