研究概要 |
中低緯度の電離圏電場の起源のうち極から侵入する電場には、対流電場と過遮蔽電場の2種類あり、それらの競合によって電場の向きが決まる。対流電場は領域1沿磁力線電流(R1-FAC)に伴う電場で太陽風磁場が南向きの場合に発達する。一方、過遮蔽電場は領域2沿磁力線電流(R2-FAC)に伴う電場であり、そのダイナモは磁気圏の非対称赤道環電流にある。本研究では対流電場と過遮蔽電場が競合した中緯度電離圏の電場が内部磁気圏へ伝搬し、さらに磁気圏擾乱に影響を与える可能性を検証することが目的である。我々はサブストーム爆発相に過遮蔽電場が卓越し西向き赤道ジェット電流(CEJ)が強まることを示してきたが、一方Huang et al.[2004,2009]はSawtoothイベントの解析からサブストーム時に対流電場が卓越すると主張した。そこで本年度は、サブストーム時の対流電場と過遮蔽電場の競合関係を明らかにするため、再検証を行った。2002-07年のIMAGE磁力計網のオーロラ帯で東向きジェット電流が強まると同時にサブオーロラ帯で過遮蔽が生じた事例(5nT以上の減少が20分以上継続)を確認し、133事例を抽出した。磁気赤道(Sao Luiz,Huancayo)の地磁気データによると、これらの事例ではCEJが強まっていた。さらに120事例で、夜側中緯度の柿岡でほぼ同時にポジティブベイが観測され、サブストーム爆発相に過遮蔽が発生したことを確認した。すなわち、サブストーム爆発相に対流電場と過遮蔽電場の両方が強まったが、R2-FACの発達により中低緯度では過遮蔽電場が卓越したと考えられる。擾乱が継続的に発生するSawtoothイベントの場合は孤立型サブストームとは異なり、R1-FACが卓越した状態が続く可能性もある。これらの成果は論文としてまとめ、2011年1月に米国地球物理学会誌に投稿した。
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