研究課題/領域番号 |
22540463
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
氏家 良博 弘前大学, 大学院・理工学研究科, 教授 (50151858)
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キーワード | 化石花粉 / 有翼型花粉 / 有機熟成 / 有機熟成指標 / 石油探鉱 / 色調 / 画像解析 / 基礎試錐 |
研究概要 |
本研究は、加熱実験によって人工的に有機熟成させた現生花粉と天然の有機熟成を受けた化石有翼型花粉の色調(R、G、Bの各強度、色相、明度、彩度)を定量的に測定し、有機熟成にともなう花粉粒子の色調変化を解明することを目的とする。 平成22年度に行った、加熱した現生クロマツ花粉および基礎試錐「小国」の有翼型化石花粉の色調測定に引き続いて、本年度は基礎試錐「由利沖中部」と「三陸沖」の白亜系から新第三系泥質岩に含まれる有翼型化石花粉の色調を測定した。測定方法は、生物顕微鏡下で有翼型花粉粒子を捜し出し、接続したカメラで撮影した花粉のデジタル画像をコンピュータ上に取り込み、花粉粒子の翼部を対象として、画像解析ソフトウェア、WinROOFを利用して色調の測定を行う。 測定結果からは、化石花粉のR、G、Bの各強度と明度は有機熟成の進行に伴い減少し、色相はほぼ一定で赤~黄色を示し、彩度は増加することが判明した。しかし、有機熟成が進行し油生成帯を越える範囲では、体系的な変化傾向は認められない。ビトリナイト反射率(R_o)および統計的熱変質指標(stTAI)と比較すると、R、G、Bの各強度と明度は、それらの値と高い相関関係を示す。相関係数は、R_oに対しては0.74~0.94、stTAIに対しては0.88~0.94である。しかし、色相はstTAIとの相関は高い(相関係数=0.82)が、R_oとの相関が低い(相関係数=0.61)。彩度はstTAIと高い相関(相関係数=0.91)を示すが、R_oとの相関はあまり高くない(相関係数=0.63)。 石油生成の敷居点(R_o=0.5%)における化石花粉の色調の値を3本の基礎試錐で比較すると、基礎試錐「小国」と「由利沖中部」の値は極めてよく類似しているが、「三陸沖」の値はそれらの値より小さな値を示し、より高い熟成度を示している。この差は岩石の年代や堆積環境の相違を反映しているものと推定する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
化石花粉の色調測定は予定通り行われてきた。しかし、予想と違い基礎試錐「三陸沖」のデータが他の試錐のデータと調和していない。花粉を含む岩石の年代や堆積環境を考慮する必要が出てきた。
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今後の研究の推進方策 |
有機熟成にともなう有翼型花粉の色調の変化を解明するためには、測定対象の化石花粉の対象年代を広げ、地理的な範囲も広げる必要がある。さらに多くの試錐から化石花粉を取り出し、測定することがまず必要である。
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