基礎試錐「新竹野町」及び「西頸城」の泥岩試料から分離したマツ属、マキ属、モミ属、トウヒ属の化石有翼型花粉を顕微鏡用デジタルカメラで撮影し、画像解析ソフトにより色調測定を行った。色調測定で得られたRGBの各強度及び明度、彩度、色相の値と試料の深度との関係を調べると、RGBの各強度と明度は深度の増加に伴い直線的に減少する傾向を示す。有機熟成指標であるビトリナイトの反射率や統計的熱変質指標(statistical Thermal Alteration Index)と有翼型花粉の色調の各要素との相関を調べると、RGBの各強度と明度が高い相関を示す。また、石油の生成段階の初めである石油生成敷居点での有翼型花粉の色調の測定値は、両試錐においてR=147~163、G=86~109、B=25~39、明度=89~105となり、両試錐間で調和的な値を示す。 さらに、閉鎖型加熱装置により現生クロマツ花粉を加熱して、有機熟成シミュレーション実験を行った結果、やはりRGBの各強度と明度は加熱温度の上昇に伴い、すなわち有機熟成の進行に伴い減少する事実が判明した。平成22年度に行った開放系加熱実験による現生クロマツ花粉の有機熟成シミュレーションでも同様の結果がでている。 以上の研究結果を総合すると、有翼型花粉の色調のうちRGBの各強度と明度は有機熟成の進行に伴い規則的で不可逆的な変化を示し、有機熟成指標としての資質を持っていることが判明した。本研究結果は、石油探鉱における石油根源岩評価、特に石油生成段階の推定に有翼型花粉の色調が有効な方法であることを示している。
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