研究課題
本研究では,陸域および海域に露出する蛇紋岩メランジの地質構造と変成作用の解析から沈み込み帯内部での包括的な物質移動様式を検討することを目的としている.平成23年度には,北海道神居古潭帯三石地域の蛇紋岩メランジの野外地表踏査を行い,中央~南東部の地質図作成がほぼ完了したほか,変成岩類の岩石学的記載やEPMA分析から変成条件の推定を進めた.その結果,三石地域全体がメランジではなく,オフィオライト岩体とメランジが並走することが判明した.さらに,これまで断層関係とされていた蛇紋岩メランジと周辺の新第三系との間に不整合関係を発見したほか,珪藻化石年代から当地域における新第三系層序を見直した.また,神居古潭帯幌加内地域においても予備調査を行い,当地域が三石蛇紋岩メランジの擾乱前の構造を残している可能性を確認した.一方,大町海山では平成22年度のYK10-13航海で採取された古第三系砂岩から蛇紋岩砕屑粒子を発見したほか放散虫化石を抽出し,蛇紋岩の上昇年代の上限を決定した.これらの成果のほかに,JAMSTEC YK11-07航海に乗船し,北部小笠原弧前弧域において「しんかい6500」による潜航調査を行ったほか,平成22年度JAMSTEC YK10-04航海でフィリピン海大東海嶺で採取された海洋性古島弧の変成岩の記載岩石学的検討を行った.
2: おおむね順調に進展している
年代測定や全岩分析など室内作業は若干遅れ気味だが,野外調査では想定以上の成果が得られているため,全体としてはおおむね順調と判断される.
・三石蛇紋岩メランジ全域の地質図が今年度中に完成するように,野外調査を進める.・変成岩類のみならず新たに発見されたオフィオライトの起源や年代を特定するため,U-Pb年代測定と全岩化学組成分析を行う.・幌加内地域における本格的なマッヒ。ングを開始し,三石地域との比較を行う.・三石地域および大町海山における変成岩類の変成-変形履歴の検討を進める.
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JAMSTEC Report of Research and Development
巻: 14 ページ: 1-15
10.5918/jamstecr.14.1
Ogawa, Y., Anma, R., and Dilek, Y. eds., Accretionary Prisms and Convergent Margin Tectonics in the Northwest Pacific Basin (Modern Approaches in Solid Earth Sciences), Springer
巻: 8 ページ: 97-128
10.1007/978-90-481-8885-7_5