研究概要 |
平成23年度は,房総半島中央部の前弧海盆で形成された中部更新統長浜層,カリフォルニア州モントレー市南部のポイントロボスに発達する始新統カルメル層,宮崎層群下部の鮮新統鹿村野を主な検討対象として,野外調査と露頭データの室内分析を行った.いずれの地層も,海底谷で形成された堆積物と解釈されている.今年度の研究では,(1)セディメントウェーブ堆積物の堆積形態と内部堆積構造との関係,(2)セディメントウェーブ堆積物の対称性,(3)セディメントウェーブ堆積物にともなって形成される堆積構造の特徴などに注目した. 今年度の検討結果から,(1)上に凸のマウンド状形態が広く認められ,波長は3-50m,波高は0.3-2m程度のものが広く認められる.(2)古流向に平行な断面では,対称性の高い断面形態が広く観察される.(3)古流向に平行な断面形態の特徴に関わらず,10°程度傾いたフォーセット層理ならびにバックセット層理が識別される.(4)古流向に斜交した断面では,トラフ型の斜交層理が広く観察される.礫質セディメントウェーブ堆積物の場合,上部に平行層理やアンティデューン層理の発達した砂岩層でドレープされるものが認められる.(5)粗粒セディメントウェーブ堆積物のでは,基底部の侵食面にフルート状のソールマークが発達する場合が認められる,などが明らかとなった. 昨年度の段階では,セディメントウェーブ堆積物は主に下流進行型のベッドフォームとして形成されたと解釈されるもののみが認定されていたが,今年度の研究により,上流進行型のものも広く存在することが明らかとなった.また,上流進行型と下流進行型を比較した場合,古流向に平行な断面形態に明確に違いは認められないことも明らかとなった.さらに,このような堆積物は高流領域での3Dデューンの下流方向あるいは上流方向への移動に伴って形成された堆積物であることが理解される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
露頭観察に基づいて,セディメントウェーブ堆積物の多様性が明らかになってきていること,ならびに粗粒セディメントウェーブ堆積物に関しては,限られた露頭データからも認定するための有効な指標が明らかになってきているため,おおむね順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
露頭断面における細粒セディメントウェーブ堆積物の認定基準がまだ確立されていないため,変形構造との類似点と相違点を明確にすることが急務と考えられる。また,水槽実験によって,アンティデューン層理や平行層理の形成条件,特に堆積物供給量の効果について検討する予定である。
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