本年度は細粒セディメントウェーブ堆積物の堆積形態の実態を解明するために,インドネシアジャワ島西部の中新統ハラン層の地質調査を実施した。ハラン層で対象とした地層は,海底扇状地システムのオーバーバンク堆積物に挟在されるもので,主に上流進行型のアンティデューン形態を示すものである。この調査では,(1)波長はチャネル中心部から離れるにしたがい減少する傾向が広く認められる。(2)波形勾配(波高を波長で割った値)はチャネル中心部からの距離に対してばらつきが大きいが,平均値を比較すると,チャンネル中心部から離れるにしたがって値が大きくなる傾向が認められる。(3)対称性(上流側と下流側の波長の比)も値のばらつきが大きいが,平均値を比較すると,下流方向へ上流側の波長が大きくなる傾向が認められる。(4)個々の細粒セディメントウェーブ堆積物の波長は2-30 m程度であるが,この程度の波長を示すセディメントウェーブ堆積物が複合して,波長が80 m程度の緩くうねった構造がみとめられる。(5)したがって,細粒セディメントウェーブにいても,複合デューンと同様に,波長の短いセディメントウェーブが複合して,波長の長いセディメントウェーブを形成している可能性が考えられる。 海底チャネルシステムに付随するオーバーバンク堆積物は緩くうねった構造が認めれれることがあり,このような構造は,従来スランプ堆積物として認定されることが多かった。しかし,今年度の研究成果から,緩くうねった構造をセディメントウェーブ堆積物として再検討する必要のあることが明らかとなった。このような緩くうねった構造はチャネル埋積物などの粗粒堆積物にも認められることがあるため,この研究成果は,露頭からセディメントウェーブ堆積物を的確に認定するために活用できることが期待される。
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