本年度の研究は以下の2点にしぼっておこなった。 1)化学組成や構成鉱物が類似したマグマの活動でありながら火山爆発性の異なる火山岩の選択とその地質調査・試料採取。これは、美ヶ原火山群を構成するいわゆる塩嶺層群の中期更新世火山岩類の中に適切なもの(扉峠火砕岩と三城火砕岩)がみつかったので、その調査としておこなわれ、地質調査の成果は論文発表に至った。 2)採取した一連の火山岩の岩石記載をおこなった。塩嶺層群の扉峠火山岩類と三城火砕岩類とは、ほぼ同様の組成のデイサイト質のマグマでありながら、岩石の発泡の程度が全く異なっており、(前者で小さく、後者で大きい)爆発の程度に相当の差があるので、両者の比較検討を行った。具体的にはマイクロライトの形成過程を比べることであったが、予想に反して、そのオーダーでの差異は認められなかった。そこでマイクロFTIR等を用いて石基ガラス中の含水率の測定を目指したが、機器の故障のために、本年度は、故障修理にかかりっきりで、それ以上の進展はなかった。ただし、肉眼で計測できる5mm程度以上の大型斑晶の量比に大きな差があることがわかり、考察を進めた。すなわち、扉峠火砕岩は、大型斑晶に富んでいる結果、マグマ上昇中に斑晶効果のために発泡が促進され、地下のある程度の深所において脱ガスが促進されたため、非爆発的なドーム形成が行われたと考えた。その機能の一部にはキャビテーションが働いた可能性がある。
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