松本市東部の美ヶ原に分布する更新世の火山岩類のうち、唐沢川火山岩類の主要な構成メンバーである三城火山砕屑岩類について、地質学的および岩石学的な検討を行った。三城火山砕屑岩類の中に火砕流起源と見られる堆積物が挟在している。この堆積物は、弱溶結した軽石の集合物が10cmオーダーの破砕物をなして角礫状に産している。主要な露出は美ヶ原高原の西部の大門沢沿いと、美ヶ原高原東部のヤテイ倉沢沿いに見られた。大門沢とヤテイ倉沢の双方のそれぞれに2層準が分布しており、それぞれ上部層と下部層と呼ぶ。大門沢の上部層・下部層ともに、岩石学的には角閃石デイサイトであり、角閃石斑晶のサイズは0.25mm程度が最頻値を示しており、石基の部分は軽石の構造がつぶれたユータキシティック構造を持つ。それに対してヤテイ倉沢のものは、上部層で、斑晶鉱物種および角閃石の長径ともに、大門沢のものと酷似しているのがわかるが、下部層は斜方輝石・角閃石デイサイト質であり、角閃石斑晶も0.4mm程度が最頻値となっており、異なっている。したがって下部層は大門沢のものと異なるフロー起源であると判断できた。 大門沢・ヤテイ倉沢ともに、湖沼成の泥質堆積物を挟在しており、水中堆積物である。一方、石基部分が弱溶結していることは陸域で一旦堆積して溶結した後に角礫状のブロックにわれて水域に対せ域したことを想定できる。かつては大門沢とヤテイ倉沢で 2層あるものがそれぞれ対比できるものと想像されていたが、構成鉱物種の相違から、異なるフローが順次発生していると考えられる。
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