研究課題/領域番号 |
22540470
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
三瓶 良和 島根大学, 総合理工学部, 教授 (00226086)
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キーワード | 汽水域 / 富栄養湖 / 有機物濃度 / 有機炭素埋積速度 / 二酸化炭素 / サプロペル / カーボンシンク / 中海・宍道湖 |
研究概要 |
今年度は、中海中央部で2本、宍道湖中央部で1本の約80cmのコア試料採取を行い(本研究で購入した佐竹式コアーサンプラーNo5178を使用)、高解像度解析のため2mm毎にカットしてCHNS元素分析を行った。また、併せて表層試料を中海で9試料、宍道湖で13試料、採取した。結果は以下のとおりである。 ○中海:[表層泥]TOC濃度は南端~湖心では3.6~4.0%のsapropelicな高い値を示したが、湖心~北端では2.7~1.0%と北に向かって減少し、1997年よりも北端部で減少していた。この理由は中浦水門撤去(2005-2009年)によって新鮮な海水の流入が多くなったためと考えられる。[コア]湖心南の0-10cm(過去約40年)では、TOC濃度は3.4~3.9%間で細かな変化を確認し4回の周期的な減少傾向で特徴づけられた。金井ほか(2002)堆積速度2.8mmをあてはめるとその4回の年代は、2006年、1995年、1986年、1977年である(約十年周期)。20-80cmでは、1~1.3%と低かった。C/N比は全体で8~10程度で植物プランクトンが主な有機物の起源である。TOCが低い深度ではC/S比(全体では1~3程度)は高くなっており、やや酸化的底質環境になったことを示唆した。熱分解GC-MSの結果は、植物プランクトン起源であるnC15,nC17アルカン/アルケンが、陸上植物ワックスを示すnC29より明瞭に高い値を示した。 ○宍道湖:[表層泥]TOC濃度は東部を除き3.5~4.3%の高い値を示した。東端では1.8%の低い値を示し、西部の斐伊川河口周辺の南方では最高値4.6%を示した。C/N比は、西端から東端までほぼ6.8~7.5の値を示したが、斐伊川河口周辺では北部で高くなっており(9~10.5)、陸源有機物の影響が大きい。[コア]TOC濃度は細かな変化をしながら、1900年以後に下位の0.7%から上位の4.1%まで大きく増加したが、その間のC/N比は6-9で大きな変化はなかった。C/S比は22cm(1990年頃)に高くなっており、湖底への酸素供給量が増えたことを示している。軟X線写真解析の結果でも貝片は約18cmに確認されたが、その他の深度ではほとんど含まれず、C/S比と共に全般に貧酸素的環境であったことを示唆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
主要な地質試料(約80cmのコア試料3本:中海2本、宍道湖1本)と表層泥22試料を採取した。コア試料は2mmに分割して全てCHNS元素分析を行い、高解像度での解析を可能にした。Py-GC-MS分析も併せて行った。以上の行程は概ね予定どおりである。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度は、堆積物中の微小有機物のキャラクタリゼーションと陸上有機物との対比を行うため、レーザー照射による顕微ラマン分光分析を行ったが、レーザーによる発熱で試料に穴があき、正確なデータ採取ができなかった。したがって、今年度は試料に水をつけてカバーグラス等で覆い発熱を防ぎ、弱い出力で長時間露光するなどの工夫によって最適条件を決め、正確なデータを採取する。
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