研究概要 |
昨年度に採取した3本のコア試料(中海で2本,宍道湖で1本:60~80cm)の分析を行ったところ次の結果が得られた。中海北部コアのTOC濃度は,70cm~30cmまでは約1.7%でほぼ一定,25~15cmは約1.4%とやや低くなり,15~0cmでは1.5%~3.2%に増加する(C/N比は約9で変化しない)。中海中央南コアでは,80cm~55cmまでは約1.4%でほぼ一定,50~25cmは約1%とやや低くなり,20~0cmでは1.5%~4.0%に増加する(C/N比は約11-8で大きくは変化しない)。宍道湖中央コアでは,60~30cmまでは約0.8%でほぼ一定,30~20cmは約0.7%とやや低くなり,20~0cmでは0.9%~4.0%に増加する(C/N比は約6-8で大きくは変化しない)。金井ほか(1997,2002)の堆積速度を基に本研究の有機炭素埋積速度を計算すると平均で10-20gC/m2yr程度と見積もられ,これに両湖の底泥分布域の面積をかけると,併せて2×10^9gC/y程度の有機炭素貯蔵能力を有し近年増加傾向にあることが分かった。 さらに,硫化水素のデータを加えて検討したところ,中海において表層TOC濃度が3.5%を超えると湖底水中に硫化水素が検出されはじめ,両者に比例関係があり,H2S(ppm)=13.9*TOC(%)-52.1 (TOC>3.5%)で表されることが分かった。一方,中海の大気CO2濃度(於:中海中央部の江島)は,平均四百ppm程度でかつ昼夜の変動差が大きいことが分かり,最大80ppm程度の昼夜差が見られた(春季)。高ピークは明け方であり昼間は低く夕方から増加する。夜間のピーク値は気温と関係があるように見え,昼間の湖表層の光合成と夜間の有機物分解の差を含めたCO2吸収放出特性を表わしているように見える。
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