研究概要 |
砂泥互層中の未固結変形構造の中には,砂層の液状化・流動化だけでは説明できないものが見出され,少なくともその一部はガスの移動が原因と考えられた.そこで,砂層および泥層中にガスが発生した場合にどのような変形が起こるかを実験的に観察して,露頭にみられる構造と比較した. 実験方法: 間隙水で満たされた砂層および泥層中でガスを発生させるために,大型の真空デシケータに水槽を設置して,真空ポンプでデシケータ内を減圧した. A.砂層中で発生した気泡の移動様式: 減圧すると砂層の間隙水中に微少な気泡が発生し膨張し始め,砂層は不飽和となる.間隙水は主として上方に押し出されていく.砂層の上部に間隙水が集まると同時に間隙水圧も上昇して,砂層は強度が低下し流動しやすくなる.膨張した気泡の一部が砂層上部に達すると,流動的な砂層中を一気に上昇し,砂層を破壊する.砂層の上位に泥層があると,間隙水・気泡ともに滞留し,ガス溜まりと水溜まりを形成する,さらに膨張したガスが上位の泥層を破壊する'と,そこにまずガスが,続いて水が脈状に注入する,このとき流動的な砂の一部も注入して砂脈やシルとして地層中に破壊構造を残す. B.泥層中で発生した気泡の移動様式: 泥層に見立てたゼラチンの上に水で飽和した砂層を堆積・させ,減圧すると,微少な気泡が発生し膨張し始めるが,水中とちがって気泡は上昇することがなく,その場でレンズ状になってさらに膨張する.レンズ状気泡が拡大し連結て上位の砂層に達すると,ガスは砂層中へ一気に注入し,それと入れ替わりに砂層中の間隙水が閉じつつあるレンズに入り込む.こうしてゼラチン層上部には上位の砂層から注入した小規模な砂脈として破壊構造を残した. これらA・Bの破壊様式は,上総層群にみられた砂層中のいくつかの未固結変形構造をよく説明する.
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