研究課題
西フィリピン海盆南部及びパラオ海盆は、フィリピン海プレートで最も古い部分の一つで、既存データがほぼ皆無であった。この海域の拡大形成史、火成活動史を理解することは、伊豆小笠原マリアナ島弧におけるプレート沈み込み開始を決定づける要因(どのような状況で沈み込みが開始されて、島弧形成にいたるのか)や、沈み込み開始時のマグマの化学的特徴の成因の解明、さらに初期島弧地殻構造の解釈の上で必要不可欠である。このため我々は、南部フィリピン海のテクトニクス復元を主目的とする調査航海を2010年10月下旬から約3週間実施した。航海では海底岩石試料採取、海底地形、地磁気航走観測を行った。その結果、パラオ海盆とフィリピン海盆の拡大方向及び様式が異なることが明らかになった。また、両海盆の境界をなすフラクチャーゾーンの海底地形の特徴から、これまでの見解と異なり,両海盆は同時期に拡大していた可能性が出てきた。海盆底から採取された試料は、その化学的特徴から、海洋地殻上部を構成する玄武岩であることが明らかになった。これは、これらの岩石の年代決定と地磁気異常データの解釈により、海盆の形成時期 、拡大形成史を解明できることを示している。今回の航海では、パラオ海盆東縁をなす、九州パラオ海嶺(古伊豆小笠原弧)の基盤岩の採取も実施した。その結果、驚くべきことに変成岩類を得た。これは、伊豆小笠原弧がこれまで考えられてきたような単純な海洋性島弧ではない可能性を提起する重要な結果である。調査船下船後、パラオ諸島の移動履歴から、フィリピン海プレートの運動を復元する目的で、パラオ諸島陸上部での古地磁気および年代決定用試料の採取を実施、現在分析中である。以上今年度は、伊豆小笠原マリアナ島弧形成にいたるプレート沈み込み開始期のフィリピン海プレートのテクトニクスを検討する上で、非常に貴重な試料、データの取得に成功した。
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