研究概要 |
本研究目的は「海生無脊椎動物の貧栄養化に対する数千年スケールでの適応戦略」と「過去7,000年間の環境変動復元に基づく日本周辺気候への太陽活動の影響」を解明することにある.対象試料は,沖縄海域の海底洞窟に生息する微小二枚貝イエジマケシザルガイ(殻長3.5mm以下)で,それらの貝殻の酸素同位体比と微量元素から,「過去の水温情報」と「殻成長パターン」の時系列データから,本研究の目的を果たす.そのためには,イエジマケシザルガイの殻の成長に関する知識が不可欠である.そこで,2010年度に標識個体の成長追跡調査を実施し,同種は1年を通して成長している可能性が高く,殻長3mmに達するまでに4年間を要することが判明した.当該年度は,このデータを英語論文として公表する作業を行ない,論文は受理された.さらに,生貝の酸素同位体比と水温との関係を検討し,同種の酸素同位体比は年平均水温を示すことが分かったので,その結果を国際誌に公表する準備を行い,現在,査読中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震とそれに伴う巨大津波の甚大な被害を踏まえ,内閣府の中央防災会議から,津波堆積物調査などの科学的知見に基づき,南海トラフにおける最大クラスの巨大地震・津波を早急に想定せよとの答申が出された.そのため,研究代表者は,静岡市周辺の完新統において津波堆積物の調査を行っている.これは静岡県に在住する科学者の中で,研究代表者だけが完新統における津波堆積物を調査できるからであり,また駿河湾奥部から御前崎までの駿河湾西海岸では,これまで津波堆積物の調査が全く行われていない.この津波堆積物調査のため,当該研究へのエフォートは大幅に低下し,研究計画から遅れることとなった.
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